去る4月、野球史上歴史的な瞬間が訪れた。ピッツバーグ・パイレーツのギフト・ンゴエペ内野手がメジャーデビューを果たし、昇格したその日にヒットを放ったのだ。彼のメジャー出場、安打ともに「アフリカ人初」の快挙である。
南アフリカ共和国(南ア)東北部のリンポポ州ピーターズブルグで生まれ、野球のクラブチームに住み込みで働いていたという母親に育てられた彼は、野球を自然と身につけ、イタリアのアカデミーを経由してアメリカに渡った。そしてパイレーツと契約してちょうど10年目の今年、ついに世界の野球の頂点に登りつめた。
「野球不毛の地」と言われているアフリカ大陸にあって、英語が公用語である南アには、比較的早くから野球が伝わり、1930年代にイギリスに存在したプロ野球リーグにはこの国出身の選手も参加している。そのような経緯もあってか、MLBはここをアフリカにおける野球普及の拠点と位置付け、各国の選手を集めたアカデミーも定期的に開催している。
ンゴエペの例からもわかるように、この国の野球はクラブチーム中心である。高校には野球部はなく、約4000人の12歳から18歳のジュニア世代の選手は、全国に約40あるクラブチームでプレーしている地元のクラブに入らねばならない。しかし、これも野球の認知度の低いこの国においてはどこにでもあるものではなく、人工芝球場を含む8か所のフィールドがあるケープタウンや、ダーバン周辺以外では、なかなか野球に巡り合うことは難しい。南ア野球の都と言っていいケープタウンには現在16のクラブがあり、800人のジュニア世代の選手が登録されているといい、年代別の全国大会を目指してプレーしている。
南アのスポーツは、人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイトの暗い歴史抜きに語ることはできない。この政策のため、ながらく国際スポーツの舞台からも排除されていたこともあるが、多人種・民族統合を目指した「レインボー・ネーション」を建設後は、1995年のラグビー、2010年のサッカーワールドカップ開催に象徴されるように国際スポーツの舞台での存在感を増している。
とはいえ、人種統合の難しさは野球にも影響を及ぼしている。クラブ中心の活動においては、当然会員である選手は会費を支払う必要が生じる。その結果、道具の価格の高さも相まって、南アにおける野球は、富裕層の子弟中心となり、結果的にそれがかつての支配層である白人6割、アパルトヘイトの被害者と言える黒人を中心とする有色人種4割という競技人口構成に現れている。
また競技者の少なさとそれに起因する層の薄さから「二刀流」の宝庫でもあり、投手のほとんどは野手としてもチームを引っ張る。そんな南アチームについて、MLBの現地スカウト、アメリコ・ジュマ氏は、投手と肩の強さを生かして外野も兼任するズイネイド・アルパーのツボにはまったときの飛距離には注目だと言う。また、タナー・バン外野手は、俊足を生かした守備範囲の広さと常に次の塁を狙うアグレッシブな走塁が魅力であるとも言う。楽しみな素材は抱えているのだ。
第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2017年9月1日~9月11日
オープニングラウンド
9月1日(金)22:30 メキシコ 1 - 10 日本
9月3日(日)5:00 日本 0 - 4 アメリカ
9月4日(月)6:00 日本 7 - 2 キューバ
9月5日(火)3:00 オランダ 1 - 3 日本
9月5日(火)22:30 日本 12 - 0 南アフリカ
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
スーパーラウンド
9月7日(木)22:30 日本 4 - 3 オーストラリア
9月9日(土)6:00 日本 4 - 6 カナダ
9月10日(日)2:00 韓国 6 - 4 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
3位決定戦
9月11日(月)1:00 カナダ 1 - 8 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
開催地
カナダ サンダー・ベイ
参加国
グループA
カナダ、韓国、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリア、イタリア、ニカラグア
グループB
日本、アメリカ、キューバ、メキシコ、オランダ、南アフリカ