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韓国・光州で行われていた「第28回ユニバーシアード競技大会」は悪天候の影響で決勝戦中止、日本とチャイニーズ・タイペイの両者優勝という形ながらも、史上初の金メダルに輝いた侍ジャパン大学代表。その快挙の要因と、更なる高みを目指す選手たちの思いを12日に羽田空港で行われた記者会見の様子も交え、振り返る。
●狙い通りの野球をやりきって掴んだ金メダル
善波達也監督が就任し、この3年間言い続けてきたのが「どんな状況でもチームのために全力を尽くす選手、日本代表の責任感と誇りを戦える選手を選ぶ」という方針だ。今回のメンバーも昨年12月、今年3月そして大会直前の6月と3回の合宿を経て、意識の徹底や結束力を強化してきた。
その中心として、3年連続で選出されてきた2人の選手がチームを引っ張った。全試合で4番を任された吉田正尚外野手(青山学院大)はチームトップの5打点で期待に応え、主将の坂本誠志郎捕手(明治大)も高い統率力とインサイドワークを発揮し、打撃でも9番打者ながら打率.500を残した。
坂本について、善波監督は「投手に関しては、スタッフだけでなく彼に選考のアドバイスをもらうこともありました」と全幅の信頼を置いていたことも12日の記者会見で明かした。
また3年連続の選出となった坂本と吉田に加え、さらに11人が日米大学野球(2013年)とハーレム国際大会(2014年)のいずれかに出場し、海外の選手のスピードやパワーを体感していた。
そのため、投手では「海外チームには縦の変化球が有効」と早くから分析し、力強いストレートとブレーキの利いたチェンジアップなどを上手く交えた投球を見せた。また内野守備では、天然芝でのプレーを昨年のハーレム国際大会で経験していた柴田竜拓(国学院大)、北村祥治(亜細亜大)、茂木栄五郎(早稲田大)らが、激しい雨の中で行われた試合でも落ち着いた守備を見せ、チームの総失策を見事ゼロに抑えた。
走塁面では、善波監督が「一歩間違えれば結果は逆になっていたかもしれない」と話す予選リーグの韓国戦や準決勝のアメリカ戦で、常に1つ先の塁を狙う姿勢を見せ、相手守備陣のミスを誘発した。
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

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●掴んだ手応えとともに、さらなる高みへ
4試合通じて、35得点無失点と結果としては圧倒したが、「様々な環境の中でみんなが知恵を出して戦わないと、金メダルにたどりつかない大会でした」と善波監督が振り返るように、慢心は一切見られなかった。
日本とは違い練習環境も十分でない中、選手村では毎朝・毎晩多くの選手が素振りやトレーニングに励むなど、意識の高い選手たちが集うことによる相乗効果も大きかった。そうした中で、しっかりと自分たちの野球をやりきったということに関しては、どの選手も手応えを口にする。
坂本主将は、「まだまだ僕自信の力不足を感じていますが、ユニバーシアードで結果を出せたことは自信になります」と話すとともに、「もし2020年の東京五輪でも野球が開催されることになれば、そこでプレーができるよう自らを高めていきたいです」と大きな目標を語った。
打率.462、打点4と活躍した茂木栄五郎内野手(早稲田大)は「自分たちのやってきたことを準決勝までに出すことができました」と話し、「レベルの高い選手に囲まれて、練習姿勢や試合への入り方など多くのことが学べました」と充実の日々を振り返った。
12日のうちに解団式も終え、それぞれのチームに戻っていった選手たち。今度は、8月26日に阪神甲子園球場で行われる第27回WBSC U−18ワールドカップの壮行試合として、侍ジャパン高校代表に胸を貸す予定になっている。
善波監督は「こういうチームが強いチームだということを伝えられるような野球がしたいです」と話し、侍ジャパン全体の活性化に更なる意欲を見せた。