文=小島尚幸
みなさん、こんにちは!
日本はこれから本格的に寒い季節に入る時期でしょうか?
ブラジルは南半球に位置しているため日本とは季節が逆になり、夏を迎えました。
クリスマスや年末年始が夏というのは少し違和感がありますが、ブラジルならではの雰囲気を味わいながら過ごすことができそうです。
さて、前回はこれまでブラジルの野球はどのような道を歩んできたのかなど、日系移民の歴史を少し交えて“ブラジルの歴史”を紹介しました。
今回は、“ブラジル野球を取り巻く環境”についてお伝えしていきます。
前回の記事でも紹介しましたが、ブラジル野球は日系人と非常に深い関わりがあります。ブラジルの日系人の人口は、約190万人と世界最大の日系人居住地と言われています。そんなブラジルでは、各地に多くの日系コミュニティやクラブが存在しています。主にそのクラブの中に野球チームがあり、子供から大人まで活動しているというのが一般的です。野球チームの数は日本などと比べると非常に少なく、試合をするにも何時間もかけて遠征しなければならないため、大会に参加するのも簡単ではありません。ブラジルの国土は日本の約23倍ととても広く、大会の際にはバスで10時間以上の移動や飛行機での遠征となることも多々あります。
ブラジル野球を取り巻く環境は、日本とは異なる点が多くある
そんなブラジルで野球をする人々を取り巻く環境を、私の配属先であるアニャンゲーラ日系クラブを一例として紹介していきます。
アニャンゲーラ日系クラブは、サンパウロ市に拠点を置き、活動しています。このクラブには野球以外にもフットサル、バレーボール、カラオケなどがあります。“餅つき大会”“運動会”や“忘年会”が行われるなど、日本のイベントも多く開催されています。かつてはかなり大きな団体でしたが、今現在の規模は縮小傾向にあるそうです。ただ、練習環境や設備等は私が想像していたより恵まれていると感じています。
このクラブには屋内施設もあり、主に平日は屋内施設にてバッティング練習等をしています。週末はサンパウロ市内から約40分程のところにあるグランドで、各年齢別のカテゴリーが練習をしています。驚いたのはこの敷地にグランドが5面あり、バッティングゲージやバッティングマシーンも完備され非常に充実した設備があること、更にすごいのは宿泊できる施設があることです。
広大なブラジルでは、土日の2日間で大会をする場合、遠方から来るチームはここに寝泊まりします。ブラジルではこういった施設を持つクラブはわりと一般的なのです。
また、日本では数日間かけて行うような大会をブラジルでは土日の2日間でやることが多く、1日に二試合することもよくあります。ピッチャーには球数制限があり、選手の投球過多や疲労を考慮されたルールも定められています。日本の少年野球ではあまりないようなこともここブラジルでは、普通ということはよくあります。
試合当日、メンバーは7人
少し驚いたのが、コーチとして初めて大会に参加した際のこと、監督が「今日は選手が7人しかいない」と言ってきました。「え、試合できないじゃん」と言うと「大丈夫!」との返答。とりあえず試合の準備を始めるものの、どうするのかなぁと考えていると試合開始の時間になってしまいました。ベンチを見てみるとユニフォームの違う子が2人。次の対戦チームから助っ人を借りてきたそうです。彼らはすぐにチームに溶け込み、次の試合、対戦相手になるにもかかわらず全力プレー。とにかくみんな目の前の試合を一生懸命やる!そんな気持ちがとても伝わってきました。日常生活の中でもそうですが、ブラジル人は初対面の人でもフランクに話したり、今、目の前のことを一番に考え、今を楽しむ文化があります。
野球を通じてブラジルの文化を目の当たりにした大会でした。
日本の野球とは違う部分がたくさんあり、驚くことや関心することもあります。こういった素晴らしい環境で思う存分、野球を楽しんでもらい、どんどん上手くなっていってほしい!そう感じています。
素晴らしい環境がある反面、人口減少問題も
当初、私が想像していたブラジル野球は野球をする場所もなければ野球道具も揃っていない、そんなイメージを勝手に持っていました。いざ、行ってみると子供たちが広々としたグランドで白球を追う姿がありました。これまでの長い歴史の中で多くの人に野球が愛されてきたからこそ、素晴らしいグランドや施設があり、情熱的で活気に満ち溢れた選手がいるのだなと感動しました。サッカーには及ばないかもしれませんが、ここブラジルでも野球が好きで野球を愛している人はたくさんいます。
その反面、野球人口の減少も問題視されています。当クラブにおいても選手が少なく、試合の時は助っ人を借りることもしばしばあります。非日系人の選手からも注目され始めた一方で全体の野球人口は減少しつつあります。
日本もそうですが、ブラジルの野球もこの問題に直面しています。野球の楽しさや魅力を多くの人に知ってもらい、野球人口の増加に繋げる活動も今後は私自身もしていきたいと考えています。
今回も読んでいただきありがとうございました。
これからもどんどんブラジルの野球をお伝えしていきますのでよろしくお願いします。
- 【第9回】2019年12月9日 「目標に向かって」
- 【第8回】2019年9月20日 「一年を振り返って」
- 【第7回】2019年8月2日 「JICAボランティアによる野球教室及び親善試合」
- 【第6回】2019年5月10日 「ブラジル野球の新たな試み(2)」
- 【第5回】2019年4月4日 「ブラジル野球の新たな試み(1)」
- 【第4回】2019年3月5日 「新チーム始動後に見えた新たな課題」
- 【第3回】2019年2月7日 「融合された野球」
- 【第2回】2018年12月27日 「ブラジル野球を取り巻く環境」
- 【第1回】2018年12月4日 「ブラジル野球の歴史」
著者プロフィール
小島 尚幸
1991年4月23日生
第91回全国高等学校野球選手権大会に埼玉県代表 聖望学園高等学校の三塁手として出場。2018年7月よりJICA日系社会青年ボランティアとしてブラジル・サンパウロ州のアニャンゲーラ日系クラブへ派遣され、少年少女への野球の指導や普及活動を行っている。日系移民が広めてきた野球文化の継承、野球を通しての人間形成を目指し活動している。
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