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"世界の野球"南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第5回「第25回世界少年野球大会千葉大会~準備編~」

2016年8月8日

文・写真=白川将寛(JICA青年海外協力隊/フィジー野球ナショナルコーチ)

2014年12月、日本から一枚のレターがフィジー野球に届きました。それは、世界少年野球推進財団様からの招待状でした。内容は、「2015年8月千葉県で開催の第25回世界少年野球大会千葉大会にフィジー野球の子どもたち5名を招待します」というもの。招待状の最後にこう記してありました。

『王貞治より』

 あの、世界の王さんから手紙きた!!最高なクリスマスプレゼントだ!!イノケさんと2人で飛び上がりました。子どもたちに伝えると、誰かが日本に行けるということで大はしゃぎ!
 この世界少年野球大会というのは、王貞治氏が理事長を務める一般財団法人・世界少年野球推進財団が主催している大会で、世界中から10歳~11歳の子どもたちを招待して、野球の試合やトレーニング・様々な異文化交流イベントを通して国際交流を楽しむ盛大な大会です。今回は千葉県成田市で2015年8月2日~10日までの9日間、16の国・地域の子どもたちが招待され開催されました。
 実はフィジーは2012年の同大会三重奈良和歌山大会に初招待されており、今回は2度目の招待。前回参加した5名の活躍を知っている子どもたちは、自分が選ばれたくてしょうがないのか普段の練習から猛アピール。練習に集中するようになりました。コミュニティ地区での練習や小学校巡回野球教室での子どもたちの様子をじっくり観察し、イノケさんと何度も話し合いながら、この5人に是非参加してもらいたい!と熱く感じた子どもを選出しました。

 選ばれた5人の中の1人にケムエリ君という子がいます。その子は、手紙が届いた2か月後から始まった小学校巡回野球教室の中で出逢った子。他の4人はコミュニティ地区の練習でイノケさんが5年前からずっと見ていた子たちであり、ケムエリ君だけはイノケさんと私で巡回していた小学校で初めて野球を知った子でした。
 なぜ、彼を選んだか。実はこの子だけは私が独断で決めてしまったのですが、出逢った瞬間から直感でこの子に日本に行ってもらいたい!と思った子でした。まず瞳の輝きが綺麗すぎた。野球教室では一番元気にプレーし、どんどん野球の質問もしてくる。出逢った初日から彼の全てに魅了されてしまい、「ケムエリ君にどうしても日本に行ってもらいたい!」とイノケさんに強くお願いしたほどでした。選んだ後、パスポートを取得させた際にわかったことなのですが、ケムエリ君の誕生日が私の誕生日と同じ日でした。このことがわかったとき、「あ、運命の子だったんだ」と思わずにはいられませんでした。笑

 イノケさんが5年前から指導していた子の中にウライ君という子がいます。5人の中で唯一の左利き(左投げ左打ち)の子です。実はウライ君は、選ばれる2ヶ月前までの約1年間、野球の練習をしたくてもできない日々が続いていました。理由は、彼のお父さんが職を失っていて、6兄弟3姉妹である大家族の家計を助けるために学校が終わったら毎日、ロティ売りの手伝いを夜遅くまでやらなければいけなかったからです。(ロティとは、カレーなどを柔らかいナンで包んだ食べ物)
 幸運なことに王さんから手紙が届いた頃、お父さんが新しい職につくことができ、ウライ君は毎日ロティ売りをしなくてもよくなり、野球の練習に参加できるようになりました。本当にタイミングが良かった。彼の野球への真摯な態度と抜群の運動センス、そして野球を思いっきり楽しみたい想いをずっと知っていたイノケさんは迷いなく彼を選出し私も賛同しました。

 5人は普段の野球の練習はもちろん、大会最終日のグッドウィルパーティーで披露することになったメケダンス(フィジーの伝統ダンス)の練習にも取り組みました。イノケさんがプロのダンサーと交渉し、指導して頂くことになりました。週4日練習し、渡航前には保護者たちの前で披露会も行いました。また挨拶程度の日本語レッスンも私のほうでさせてもらいました。

 日本への渡航はニュージーランド経由で行くのですが、フィジー人はニュージーランドに入国する際ビザが必要であり、子どもたちはビザを取得しなければいけません。しかし、そのビザは値段が高く、経済的に苦しい家庭では取得が大変だということで、イノケさんと話し合い、「募金活動パーティー」を開催することにしました。夕食チケットを作り、それを売ってチケット代の半分が利益になり、それをビザ購入費にあてるというもの。当日はたくさんの現地の人々、また日本人の方々も駆けつけてくださいました。
 パーティーでは、イノケさんからこの大会の説明や子どもたちへの熱い想いが述べられ、私のほうからは大会参加の経緯、子どもたちの紹介や練習の様子をまとめたムービーの上映をさせて頂きました。今思い返すと、熱くなりすぎて何度も「サンタクロースはあの世界の王さんなんです!!」と叫んでいた気がします。笑
 たくさんの方々のおかげでビザ代が集まり子どもたち全員分のビザを購入することができました。これで5人の子どもたちが日本で野球を思い切り楽しむことができる!本当に感謝の気持ちで胸いっぱいでした。寄付してくださった皆様に心から厚く御礼申し上げます。

 世界の王さんからの最高なクリスマスプレゼントが、たくさんの温かい人々に見守られながら、フィジーの子どもたちに舞い降りてきた。子どもたちも保護者の方々もそしてイノケさんも、ワクワク・ドキドキして楽しみでしょうがない様子。HAPPYに包まれるフィジー野球の子どもたち、大会当日はどんな姿を見せてくれるかな。

以上、「第25回世界少年野球大会千葉大会・準備編」でした。次回は「第25回世界少年野球大会千葉大会・当日編」をお届けいたします!

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

大嶋賢人
1994年8月8日生
都内の教育大学を卒業後2017年8月よりFiji Baseball & Softball Associationに青年海外協力隊の野球隊員として配属。ナショナルチームの指導や巡回型普及活動を行っている。「年間300日雨が降る」と言われる首都スバ市で”NO SWING-NO HIT!”をモットーに現地の子どもと白球を追っている。好きな言葉は「出来なくて当たり前、出来たら男前」。

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