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"世界の野球" 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第8回「フィジー野球の2年間を振り返って(後編)」

2017年1月23日

文・写真=白川将寛(元JICA青年海外協力隊・フィジー野球ナショナルコーチ)

「誰のためのボランティアだったのだろう」
 帰国して、フィジーでの2年間を思い出す時、いつも心に問いかけてしまうこの想い。青年海外協力隊というのは、国際協力機構JICAが行っているボランティア事業であり、派遣前訓練の時からボランティアについて考えることはとても多かった。
 ボランティアって何なのだろう。誰のためなのだろう。僕はフィジーへの恩返しがしたくて参加させてもらっていたけれど、2年間で気づいたことは、
恩は、誰かや何かに「返す」ものじゃなくて
目の前の誰かや何かに新しいエネルギーとして「循環」させていくもの
なのかなって思った。

 学生の頃の留学中に出逢って素敵な時間を共有させてもらったフィジーの人々に再会できるわけじゃない。その人たちに出逢えたから、またフィジーに帰りたいと思ったけれど、この2年間で出逢うのはまた別の人たちであり、留学時すごしたナンディ町やラウトカ市ですごすわけでもない。

 2年間の僕には
目の前に、野球が好きなスバ市の子どもたちがいる。
隣に、野球を普及させたい情熱で頑張っているイノケさんがいる。
イノケさんと僕を夕方ずっと待ってくれているクラブチームの選手達がいる。
いつも応援してくれるJICAの仲間がいる。

 きっと、この人たちのために自分ができること、必要とされていることをしていきたいんだ、そう思って2年間をすごしていた。けど、2年間が終わって気づきました。

結局、全部、自分のためにしたいんだな、って。

 この人たちの笑顔を、野球を通して自分が見たいだけなんだな、って。その権利を得るためにJICAに応募したのかな、って。その自分の欲求を満たすために、表面では「フィジーのために」と言いながら、結局全部自分のために行動していたんだと思う。それが真理だったような気がします。
 そして、その自分のためにとった行動が、目の前の子どもたち、隣のイノケさん、応援してくれる方々に明るいエネルギーを生み出せることを望んで活動していたように思います。

 6年前の留学でもらったHAPPYなエネルギー。青年海外協力隊として、自分の欲求を満たすためにとった行動が、目の前の人たちに新しいエネルギーとして循環していくものでありますように。そのチャンスをJICAにもらえていた。大好きな野球でもらえていた。場所も与えてくれていた。幸せな時間をすごしていたのだと思います。今、感謝の気持ちいっぱいです。

 フィジーの人たちはよく言います。
「Slow&Easy」気楽に、のんびりと。
 もうボランティアなんていらないんじゃないかと思ってしまうほど幸せに笑う国民性。でも色んな問題は確かに存在していて生活に困っている人々もいっぱいいる。まだまだ支援に頼っている部分があるし、日本以外からもボランティアが派遣され続けている。
 ただ、どんな状況であろうと、気楽にのんびりと生きるフィジーの人たちの姿は、「もっと人生楽しんでいいんだよ」「どんなときもひとりじゃないよ」という人生に対する絶対的な安心感のようなものをもたらしてくれました。安心感があれば人は明るい気持ちで生きていけると思います。
 これから出逢う人たちに僕も安心感をもたらせることができるような生き方をしていきたい。今、強くそう思います。

 第8回目まで読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。また、コラム連載にあたり御尽力くださった侍JAPAN関係者の皆様、JICA関係者の皆様にも心から御礼申し上げます。青年海外協力隊の活動は終わりましたが、僕はこれからもフィジー野球を応援し協力し続けていきます。またここで皆様にフィジー野球の様子をお伝えできれば嬉しく思います。それでは、また。

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

大嶋賢人
1994年8月8日生
都内の教育大学を卒業後2017年8月よりFiji Baseball & Softball Associationに青年海外協力隊の野球隊員として配属。ナショナルチームの指導や巡回型普及活動を行っている。「年間300日雨が降る」と言われる首都スバ市で”NO SWING-NO HIT!”をモットーに現地の子どもと白球を追っている。好きな言葉は「出来なくて当たり前、出来たら男前」。

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