9月16日から台湾で開催される第27回BFAアジア選手権へ向けて、侍ジャパン社会人代表の選考合宿が8月1日から3日間、千葉県内で行われた。
今回の選考合宿では、国際大会の経験豊富な選手に加え、将来性溢れる若手選手など、37名の候補選手たちが招集された。選考合宿中に、強化試合3試合が行われたが、試合前に、「自分のパフォーマンスを最大限に発揮してほしい」と安藤強監督から伝えられた選手たち。結果として、日本代表の常連メンバーの1人である主砲・林 稔幸(富士重工業)は2試合に出場し、3本塁打8打点の大活躍。ベテラン選手に負けじと、若手野手も、勝負強いバッティングや、好守備を見せるなど代表入りへ向け、存分にアピールした。さらに、投手陣も、17名が候補入りしたが、それぞれに力強い速球と、キレのある変化球を披露し、選考メンバーの首脳陣を悩ませるほどの嬉しい活躍をみせ、強化試合は2勝1敗で勝ち越した。
「どの選手も持ち味を出してプレーしてくれたので、代表メンバーの選出はとても悩みそうです。ただ、投手は適正を試したかったので、もう少し試合がしたかったという部分もあります」そう話す安藤監督は、本戦へ向けて、「ビッグとスモールを兼ねる野球をしたい」と語った。
ビッグは長打のことだが、主砲・林がすでに3本塁打を放っているように、すでにその構想は見えつつある。逆にスモールの小技の部分は、これからだ。
「彼らの走塁技術、バント技術をこの合宿で試していきました」と、果敢に盗塁を仕掛ける場面も目立った。もちろん、打撃、機動力だけでなく、各選手の守備力も重視している。強化試合3試合では、指揮官の期待以上のパフォーマンスをみせ、ピンチの場面では好守備を見せる選手が多かった。
投攻守、いずれにおいても、高いレベルの力を兼ね添えた代表候補選手たちだが、今回、選考において、1つのキーポイントになるのが、「未来へつなげる」というテーマだ。
これは2020年の東京五輪へ向けて、野球・ソフトボールが競技化する可能性が出たことも影響しており、正式に競技種目に決まれば、東京五輪へ向けて次世代の選手を育成しなければならないと、安藤監督は使命を感じている。今回は、20代前半の選手も多く選出されているが、ただ「優勝」を目指すだけではなく、若手選手を育てたいという狙いもある。
合宿期間中、安藤監督から、若手の選手に声をかける場面も目立った。とくに象徴的だったのは、強化試合2試合目のことだ。この試合、4回表の二死満塁のピンチで、安藤監督はタイムを取って、マウンド上の候補選手最年少の田嶋大樹(JR東日本)の元へ駆け寄った。選考合宿ではマウンドに行かないと決めていた安藤監督だったが、田嶋の肩に手を掛けると、「打たれてもいい!とにかく思い切っていけ!」と伝えた。
「19歳なので、どうしても遠慮してしまうのも分かりますが、もっと堂々と投げてほしかった。あれほどのボールを投げる投手ですから」と振り返る安藤監督。田嶋はこの一言で安心したのか、次打者を打ち取り、この回を無失点で切り抜けた。
また、これまでにU-18、U-21で代表入りし、今回、社会人と、3カテゴリで代表入りする可能性を持つ山岡泰輔(東京ガス)に対しても、
「彼のように、各世代を経験する選手がこれからも出てきてほしいです。侍ジャパンの中で、上のカテゴリを目指していくんだという思いを持って選手たちにはプレーしてほしいです」安藤監督は、その思いこそが、選手のステップアップにつながると考えている。さらに、捕手4人の代表候補選手についても、
「やはり代表経験のある中野滋樹(JR九州)が柱になると思いますが、若い捕手を選ぶことで、次世代へ向けての捕手を育成したいという考えもあります」と語る安藤監督。『未来へつなげる』という大きなテーマのもと挑む第27回BFAアジア選手権。現在、大会5連覇中の侍ジャパン社会人代表は今回、6連覇という偉業を果たすべく、選考と合わせて、着々とチーム作りを進めている。
代表メンバーの発表は8月20日ごろを予定している。厳しい競争を勝ち抜いた24名の選手たちは、第27回BFAアジア選手権において、力強いプレーを見せてくれるに違いない。