ドラフト上位指名が期待される「侍ジャパン社会人代表」の面々
9月16日(水)から台湾で開催された第27回 BFA アジア選手権で惜しくも3位に終わった「侍ジャパン社会人代表」。今回選考合宿を経て選出された24名のうち、10月22日(木)開催「2015年 新人選手選択会議(ドラフト会議)」対象選手は山岡泰輔(東京ガス・投手・瀬戸内高卒2年目)、田嶋大樹(JR東日本・投手・佐野日大高卒1年目)、酒居知史(大阪ガス・投手・大阪体育大卒1年目)、中山悠輝(東京ガス・内野手・PL学園高卒2年目)を除く20名となっている。
そのうち今回は「ドラフト上位候補」の呼び声が高い近藤大亮(パナソニック)、近藤均(王子)、木下拓哉(トヨタ自動車)の3人を紹介したい。
「ハイクオリティな豪腕」近藤 大亮(パナソニック)
140キロ後半の快速球、140キロを超えるカットボール、落差が鋭いフォークと1つ1つの球の精度が高く、常に全力で腕を振る投球スタイルを見せる右腕・近藤大亮(パナソニック)。中学まではスポーツトレーナーを将来の夢にしていた普通の高校生投手は、浪速高(大阪)2年の夏、大阪大会準々決勝での出来事から劇的な変革を遂げ始めた。
WBSCプレミア12侍ジャパンのロースター45名に名を連ねた浅村栄斗(埼玉西武ライオンズ)らを擁し、後に全国制覇を果たす大阪桐蔭に対し延長12回まで無失点。惜しくも敗れたとはいえ、「あの試合で、僕もプロを目指したい気持ちになりました」と本人は当時を振り返る。
大阪商業大に進んだ後も当初は芽が出なかったが、当時のトレーナーから「腕の振りに耐えきられる体力がない」という指摘を受け、ウエイトトレーニングに取り組んだことで肩の故障も癒えた3年秋から徐々に実力を発揮。4年時には年間8勝を挙げ、秋には第44回明治神宮野球大会に出場。関西の名門・パナソニックへの入社を勝ち取った。
そしてパナソニックでは1年目から活躍。第40回日本選手権ではベスト4に導く投球を見せ、2年目に大阪ガスの補強選手として出場した都市対抗では140キロ後半の速球がうなりをあげ、計3試合で11回3分の1を投げ僅か2失点の好投で準優勝に貢献。そして侍ジャパン社会人代表に初選出された「第27回 BFA アジア選手権」でも、インドネシア戦で2回打者6人を相手に5奪三振の好投を見せた。また、この大会中は体調管理の仕方や日記をつけ日々自分を見つめ直すなど、社会人を代表する技巧派左腕・片山純一(JR東日本)の姿を同部屋で触れ、投手としてさらなる刺激も受けている。
「とにかく腕がちぎれるまで全力で投げていきたい」と意気込む近藤。ハイクオリティな豪腕は、気持ちをさらに高めてプロの世界に挑んでいく。
「社会人3年目のブレイク」近藤 均(王子)
常時140キロ前半・最速145キロのストレート、カットボール、カーブなど多彩な変化球を投げ分ける近藤均(王子)。そして、彼のピッチングスタイルを見た人の大半が「高木勇人(巨人)タイプ」と口を揃えるゲームメイク力も特長である。
高木は近藤と同じ東海地区の三菱重工名古屋出身で、25歳でプロ入り。そして近藤も25歳を迎えた社会人3年目の今年、一気にブレイクを果たした。都市対抗東海地区予選で昨年の日本選手権王者・トヨタ自動車との第3代表決定戦で完封勝利をあげ都市対抗の座を射止めると、東京ドームでも1回戦のセガサミー戦、2回戦のHonda戦で連続完封。準決勝の日本生命戦11回裏にサヨナラを許すまで28回3分の1を無失点に抑える快投で文句なしの「第27回 BFA アジア選手権」侍ジャパン社会人代表入りを果たした。
第1戦の中国戦で7回裏に登板し1回無失点の好投で侍ジャパンデビューを飾った近藤。しかしその反面、第4戦の韓国戦で9回からクローザーとして登板した近藤は、二死から逆転サヨナラ2ランを浴び勝負の厳しさも味わった。この悔しさを張らず場所は次のステージで。再び侍ジャパンのユニフォームを着る時は、逞しくなった姿をきっと見せてくれることだろう。
強肩強打の「伸び盛り」捕手・木下 拓哉(トヨタ自動車)
最後に紹介する木下拓哉(トヨタ自動車)は、長打力、強肩、投手の持ち味を引き出すリードセンスと総合力の高さを評価される大型捕手だ。高知高、法政大と名門チームのレギュラーを歩んだ木下はトヨタ自動車でも1年目から正捕手として活躍。日本選手権では8番打者ながら5試合で16打数5安打、3打点とバッティングでも結果を残し、防御率0.00と圧巻の投球を見せたエース佐竹功年を影で支え、チームを3大会ぶり4回目の優勝に導いた。
そして2年目を迎えた今年は攻守両面でレベルアップ。都市対抗野球大会では12打数6安打、打率5割と打てる捕手として大活躍。 第27回BFAアジア選手権でも正捕手として中国戦では4打数3安打4打点。その後も連続安打を続けていき、出場4試合で12打数6安打、打率5割と国際大会でも力を見せ付けている。
代表前の強化試合から田嶋大樹(JR東日本)をはじめとする若手投手へのサポートへも気を遣うなど、トヨタ自動車の大先輩・古田敦也氏(元:東京ヤクルト監督)のようなリーダーの自覚も見えた木下。「伸び盛り」がハイレベルなプロの世界でどのようなのびしろを示すのか、今から楽しみである。
競争の中で野球に対する心構えばかりでなく、技術力・身体能力向上の追究に年齢問わず勤しむ集団「侍ジャパン社会人代表」での経験は今回紹介した3名のみならず、プロに進んだ選手たちにとって、成長のベースとなることは間違いない。10月22日は彼らにとってゴールではなく、スタートライン。さらなる成長の先にあるのはもちろん、「侍ジャパントップチーム入り」、そして今回果たせなかったアジアチャンピオン、世界一獲得である。