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"世界の野球"日本人指導者の挑戦 香港野球代表「日本野球が与えてくれた自信」

2017年5月31日

文・写真=色川冬馬

 2日目は、早朝から2試合が計画されていた。初戦の相手は東北大学、2試合目の相手は青葉クラブだった。
 相変わらず仙台の気候は寒かったが、朝から選手たちの姿に変化が見えた。選手たちが、率先して動き、役割分担をしながら準備を進めている。また、試合中もイニングの合間に動いて準備するようになっていた。私が嬉しかったのは、「自らの経験から学んだ知恵」で選手達が動き出したことだった。これだけでも、確実に海外へ足を運んだ価値があったと思っている。自らの経験を通して得た学びは、一生忘れることはないだろう。

 東北大学はチーム一丸となって向かってくる日本の学生らしいチームだった。香港代表はミスから先制を許してしまうものの、すぐに点数を取り返し、ゲームはテンポよく進んでいった。最終的には、やはり経験の差と言えばいいのだろうか。香港野球としては、持っているものを出しきれず1−5で敗北。ただ今まで練習してきた守備や連携が随所で発揮され、結果以上に手応えを感じた試合だった。
 全体を通して言えば、良いプレイをチーム全体の結果に繋げられない苦しい時期だった。私は、やっと監督として、監督らしい仕事が回ってきたとも感じた。ここまでの戦いを通して、見え始めた選手達の強みを試合で繋ぎ、結果に変えるのが仕事。チーム状況以上に、私の気持ちは前を向いていた。

 仙台にて3試合目の相手は「青葉クラブ」という地元の人たちで構成された硬式のクラブチームだった。序盤、香港代表は相手のエラーでランナーを出塁させると、後続のヒットで先制した。その後も、プレッシャーのかかる場面で追加点を加え、試合は10−1で仙台にて初勝利を飾った。
 私は野手出身の人間なので、どうしても守備や攻撃にばかり目がいってしまうが、投手が安定して投げてくれると、こうしてチームは安定する。香港野球の1番の課題は、思うようにストライクが取れない投手陣だ。私は野手出身なので、経験もほとんどなければ、投手の為の特別な練習プログラムを持ってはいない。香港代表の投手陣にも常に言っているが、私は共に考え、学び、そして目標に向かって一歩ずつ歩んでいくしかないと思っている。

 こんな課題を抱えながらの遠征でもあったので、考え、工夫して戦略を練って戦う日本野球から学べることが沢山あった。球速がなくても渡り歩いて行けること、チームで助け合い協力すること、日本野球のアイディアやチームプレイは香港野球へ自信を与えてくれた。また、投手育成に必要な知識を各チームの指導者より教授していただき、帰国後の練習でやるべき事が明確になっていった2日目だった。

著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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