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"世界の野球"日本人指導者の挑戦「0-29、香港野球の厳しい現実」

2017年5月22日

文・写真=色川冬馬

 香港代表団の初戦の相手は、宮城県富谷市に本拠地を置く七十七銀行硬式野球部。この日も、この時期にしては珍しく、宮城県の気候は冷え込んでいた。
 球場に到着してもなお、初めての寒さに選手達はポケットから手を出せない。その場しのぎのホッカイロや、ジャケットを羽織るだけでは通用しない寒さだった。動いて寒さをしのぐ事を知らない選手達は、周りにあるもので寒さをしのごうとしたが、東北の冬はそんなに甘くはない。試合も0−29という香港代表団のワーストレコードに迫る大敗を喫した。(過去に33失点した事があるそうだ)仙台初日、初めての雪に興奮していた選手たちの姿は何処にもなく、この1ヶ月半で積み上げてきた選手たちの自信は一瞬にして消え去った。

 私も、ある程度の覚悟をして挑んだ試合ではあったが、ここまで離されるとは想像していなかった。ただ、結果に下を向いていても何も好転はしない。自分たちが置かれた現実を受け止め、学びを得る作業が必要だった。
 冒頭にも触れたように、先ず香港代表は「寒いから負けたのか?」の問題を解かないと、話を前に進められないと私は考えていた。試合後のミーティング、香港代表団が導き出した答えは「どんな環境の中であっても、スポーツはフェアにできている」ということだった。寒いのは、相手方も同じなのだ。その環境の中で、相手はどのようにして結果へ結びつけたのかを学ぶ必要がある。

 七十七銀行では、控え選手の試合中の準備や出場選手のケア、投手のクイックモーションや捕手の送球等の測定、そして各選手の能力やクセを、それぞれの立場から見極めていく首脳陣がいた。こういった情報をいち早くチーム内に共有し、使える情報として、序盤からチャレンジしてくる。こうした日本特有の細かく役割分担された試合中のマネジメントは、実践を通したからこそ得ることができた学びだ。野球経験者の方は「当たり前」と思うかもしれないが、試合経験の乏しさから、試合中のベンチ内の動きにも大きな差を生んでいた。

 試合後、七十七銀行野球部のご厚意により「交流&質問タイム」を頂き、私は一生懸命通訳に走り回っていた。香球代表選手の野球を学びたい、もっと強くなりたいという熱意と姿勢が、言葉の壁を超えて新たな交流を生んでいたるように感じた。交流会後、香港選手は口々に「新たな知識と課題で頭がいっぱいだ。帰ったら練習で試してみたい。本当に有難う!」と言っていたほどだった。

 一方、私はこの結果を受けて、香港野球代表監督として本当に情けなく、香港の皆さまへ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。ただ、そんな状況でも立ち止まることなく、前へ歩み続ける選手達の姿に勇気付けられている自分がいた。改めて、このチームで良かったのだと、心の底から思えた。そして、私が先頭にたって、今一度、香港野球代表団という大きな船の舵をきっていかなくてはならないと強く気持ちを引き締めた。試合には負けても、私たちは香港政府からの資金援助を得て、香港の誇りを胸に日本までやってきたのだ。この悔しさを胸に、明日を変える約束を選手と交わした。

著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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