文・写真=元 野球日本代表 清水直行
初戦、黒星スタートのニュージーランド代表は敗者復活にまわった。対戦チームは、昨日の第2試合でオーストラリア代表に負けたフィリピン代表だ。
前夜、チームはホテルに戻りミーティングを重ねた。特にコーチングスタッフのミーティングはコミュニケーションの部分に時間をかけた。もちろん、今後の試合に向けての戦略であり、継投などについても何パターンも準備をした。ニュージーランド代表の弱点は守備にあった。それは投手陣であり内外野の守備にも言える。投手は、とにかくストライクを先行させていくことが課題であり、追い込んでから必要なボール球で勝負をする変化球のコントロールがまだ未熟だ。内野の守備で言えば打ち取った打球を確実にアウトにすること。さらには確実なスローイングだ。外野手は前の打球への心配はないが、大きな打球やライナーの判断で大きなミスをする不安があった。内野手と同様にカットマンや各塁への送球も、相手チームに次の塁を与えないようにするには大切な作業となるだろう。こういったことの一つ一つの積み重ねがチームの守備力になる。
フィリピン代表戦では投手陣が課題に取り組んでくれた。先発投手が4回途中まで5安打(1本塁打含む)されるもストライク先行で四球をひとつも出さずに46球を投げて2番手投手へと繋いでくれた。前日の南アフリカ代表と打線は違うが、打者に対してストライクを多く投げていた。しかし、甘いコースや高さの投球もあり、鋭い打球を多く打ち返されていた。内野の守備でもライナーの好捕や外野の大きな飛球の好捕もあった。2番手投手は1四球があったものの、22球を投じアウトを3つ取ってくれた。
打撃陣は、初回に1失点と先行されるも、すぐさま1回裏に2点を取り返してくれた。さらに2回にも1点を取ってくれた。試合中盤は乱打戦となった。ニュージーランド代表は4・5・6回で6失点。しかし打線が5回に1点、6回には4―7と劣勢な展開から6点を取って逆転に成功した。その後7回8回と追加点を重ね、終わってみれば17―7の8回コールドゲームでフィリピン代表に勝利した。
試合中盤には劣勢となり厳しい時間があったが、前日の継投シミュレーションのかいもありスムーズに継投ができた。試合は常に動いている。4年に一度の国際大会だ。当日の選手の調子もあるだろうが、やはりどんな状況であれ、ベンチとしては選手に対して、事前に心と体の準備の時間をうまくつくることが如何に重要か学ばせてもらった。3番手投手も失点を重ねるも、チーム全体として焦らず一つ一つ後手にならぬようにやれることを積み重ねたことが勝因だったのではないかと感じた。8回にはチーム最年少である17歳のKyle投手を登板させることができた。1イニングで13球を投じ無失点。これも代表チームとして大きな収穫となった。
実は、この大会に入る前にあるニュージーランド代表選手に突然な出来事があった。アメリカのメジャーリーグで活躍していたLincoln Holdzkom選手の事故死だ。当時はあまりにも衝撃的で言葉を失ったことを思い出す。彼はこの代表チームの中心的選手となる準備をしてくれていたのだ。とても残念な出来事だった。ニュージーランド代表チームは、そんな我々の仲間の追悼を込めてユニフォームの左胸には彼の背番号である37を刺繍し戦っていた。この日の勝利でまた次の試合の権利を得た。我々はそう簡単には諦めるわけにはいかないのだ!と左胸に誓っていた。
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著者プロフィール
- 清水直行(しみず なおゆき)
- 1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。
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