文・写真=元 野球日本代表 清水直行
現役を退いて以来の先発マウンドはほろ苦いものとなった。4月20日にオークランドで開幕した中高年を対象にした世界規模の国際大会「ワールドマスターズゲームズ2017」に出場した。私がエントリーしたのは、種目は野球と趣味で続けているゴルフだった。
野球は「ニュージーランド・ノース」というオークランドの北部地域チームの一員として出場。22日の試合では、先発マウンドに上がった。35歳以上のカテゴリーだ。
試合時間は7イニングか、1時間57分を超えたイニングの終了まで。私は同じニュージーランドから出場したチーム相手に6イニングを投げた。結果は確か11失点だった。味方の失策もあり、失点を重ねた。
まっすぐの球速で115キロくらい。カーブやスプリット、スライダーと変化球も駆使した全力投球だった。その日の夜には引退の引き金にもなった左膝の痛みを発症して、水もたまった。
自宅でアイシングを施したが、腫れがひかない。人数はギリギリで交代要員はほとんどいない。翌日の試合は一塁を守って、打席にも経った。チームはリーグ戦を勝ち上がって決勝へ。中6日で再びマウンドへ上がった。リードしていたが、またしても私が打たれての敗戦。悔しい銀メダルに終わった。それでも、スポーツはやはり楽しい。ゴルフ競技には、大会期間中に野球の試合日と重なりながらも出場しており、先発した翌日や投手以外で出場した日の試合後にも、左膝をかばいながらも元気に出場した。
お国柄、盛んなラグビーや男子のソフトボールは大盛況だった。野球も1つ上のカテゴリーは8チームが出場し、海外からのエントリーもあった。
驚かされたのは、外国人の真剣さだ。日本でおじさんがスポーツをすると、大会前に必ずといっていいほど「けがをしないように」と運営側からアナウンスがある。しかし、現地の大会では盗塁の場面でヘッドスライディングをする選手がいた。負傷した箇所にテーピングを巻いて出場を続ける人まで・・・。マスターズとはいえ、世界大会ということを実感させられた。
大会の開幕前日には、日本からスポーツ庁の鈴木大地長官が訪れた。現地でキャッチボールを一緒にさせてもらった。次回の21年開催は、日本の関西地方で行われる。外国人のようなハードなプレーにならなくても、生涯スポーツのきっかけになればと思う。
最後に1つ自慢をさせてもらうと、2004年アテネ五輪で銅メダル、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で金メダルを獲得している。今回は決勝で負けて銀メダル。3大会で金、銀、銅と3つのメダルを手にすることができた。
(構成協力・産経新聞社 田中充)
- 【第38回】2017年12月11日 「踏み出す勇気と、最初の一歩」
- 【第37回】2017年9月26日 「野球人口のすそ野拡大へ」
- 【第36回】2017年7月10日 「中国野球へ」
- 【第35回】2017年6月27日 「首相官邸 晩餐会」
- 【第34回】2017年6月15日 「ワールドマスターズゲームズ2017」
- 【第33回】2017年4月13日 「ニュージーランドから日本へ」
- 【第32回】2017年3月30日 「恩師に感謝」
- 【第31回】2017年3月24日 「WBCから考える国際大会の運営」
- 【第30回】2017年2月17日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.2」
- 【第29回】2017年2月13日 「WBSC U-18 ワールドカップ オセアニア予選 vol.1」
- 【第28回】2017年2月8日 「日本野球教室 in NZ 2017」
- 【第27回】2016年11月17日 「ワールドマスターズゲームズ 2017 in Auckland」
- 【第26回】2016年9月30日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.2」
- 【第25回】2016年9月21日 「NZ代表U-15 ワールドカップ 後記 Vol.1」
- 【第24回】2016年7月20日 「NZ U-15代表チーム 強化練習 Vol.2」
- 【第23回】2016年6月22日 「NZ U15代表チーム 強化練習 Vol.1」
- 【第22回】2016年5月23日 「オークランド Japan Day 2016」
- 【第21回】2016年5月12日 「WBC予選大会 現地最終レポートと、ボス選手」
- 【第20回】2016年4月15日 「WBC予選大会 現地レポート vol.4」
- 【第19回】2016年3月18日 「WBC予選大会 現地レポート vol.3」
- 【第18回】2016年3月9日 「WBC予選大会 現地レポート vol.2」
- 【第17回】2016年3月4日 「WBC予選大会 現地レポート」
- 【番外編】2016年2月24日 「第4回WBC予選大会・総括インタビュー」
- 【番外編】2016年2月5日 「第4回WBC予選大会直前インタビュー」
- 【第16回】2016年1月27日 「挑む」
- 【第15回】2015年11月24日 「WBC予選」
- 【第14回】2015年10月13日 「プロジェクト」
- 【第13回】2015年8月24日 「挑戦」
- 【第12回】2015年8月3日 「融合」
- 【第11回】2015年7月9日 「意識してほしいこと」
- 【第10回】2015年6月24日 「活動とは」
- 【第9回】2015年6月9日 「野球よりソフト?」
- 【第8回】2015年5月22日 「トライアル(12U NZ)」
- 【第7回】2015年5月11日 「指導者」
- 【第6回】2015年4月23日 「NZ National Championship」
- 【第5回】2015年4月6日 「日々の練習」
- 【第4回】2015年3月18日 「防御力」
- 【第3回】2015年2月27日 「ニュージーランドで日本の野球教室を。」
- 【第2回】2015年2月6日 「オセアニア予選」
- 【第1回】2015年1月22日 「日本野球をニュージーランドに伝えよう」
著者プロフィール
- 清水直行(しみず なおゆき)
- 1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」2024年11月25日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |