文・写真=元 野球日本代表 清水直行
日本野球を世界に伝えたいということと同じくらい、スポーツを通じて国際交流を図ることは、ものすごく重要なことだと考えている。
4月10日。日曜日だったこの日、私が生活しているニュージーランドのオークランド市では「Japan Day」が開催された。「Japan Day」というのは言葉の通りで、オークランド在住の日本人や現地の人たちに日本の伝統文化から現代文化まで幅広く日本文化を紹介し、体験してもらう機会を提供するイベントのことだ。イベントを通じて、日本とニュージーランドの両国の人たちが相互理解を深める狙いがある年に一度の恒例行事だ。今年は15回目で、参加規模は5万人にまで膨らんでいる。
開催前、私にイベントのことを説明してくれたのは、実行委員を務める日本人たちだ。そこには、ニュージーランド日本経済懇談会の「二水会」のメンバーの方も同席されていた。その場での話はこうだった。「今年のジャパンデイで野球を紹介するのはどうだろうか。今年から二水会としてジャパンデイに参画していく中の目玉として、野球を考えている」。
ジャパンデイでは、文化展示や食品・出店、スポンサー・企画展示、ステージ・エンターテイメントの4つの部門がある。そのステージエリアでの野球紹介の企画が持ち上がっていたのだ。野球の紹介、まさに日本野球の紹介の場を提供してくれるということだった。私は即答し「ステージだけではなく、屋外でのピッチング教室やU-15ニュージーランド代表選手による実技披露などはどうでしょうか」など、次々と提案をしていた。そんなミーティングは昨年の11月頃だったと記憶している。
それからは、日本のNPBエンタープライズにも協力をしてもらえることになり、イベントには侍ジャパンの試合映像とたくさんのグッズを提供していただいた。ステージ上での私の衣装も作ってくれた。衣装は侍ジャパンの現行のユニホーム。背番号は、アテネオリンピック日本代表の時につけていた11番だった。現地のオークランドでは何度もミーティングを重ね、新しい企画としてスタートしていった。
迎えたイベント当日は、生憎の雨模様。それにもかかわらず、今年も4万5000人を数える来場者があった。プログラム進行上の多少の遅れがあったものの、ほぼ予定通りに進み、日本野球の紹介の時間となった。ステージ上には英語を上手に話せない私をサポートしてくれる横田崇明氏とVincent Fegan 君が一緒にいてくれた。ステージにある2つのモニターでは侍ジャパンの試合映像が流された。
ステージ前には150席程の椅子が用意されていたが、立ち見が出るほどの人たちが野球の紹介に耳を傾けてくれていた。現地の人たちもいた。30分間の質疑応答形式の講演会の最後には、今年7月末から福島県いわき市で開催が予定されているU-15野球ワールドカップに出場するニュージーランド代表選手4名に登壇してもらい、短い時間ではあったが、それぞれに目標と野球について答えてもらい講演会は終了した。講演会後には、屋外で私とU-15代表選手の実技披露が予定されていたが、その頃には会場の外では雨が激しく降っており中止となってしまった。これは今でも残念だったと思っている。
野球を見たことがある人に、もっと野球を知ってもらうこと。野球道具に触れてもらうこと。そして、グラブに入るボールやバットでボールを打つときの音や感触を体験してもらいたい。さらにいえば、少しでも野球に興味をもってもらいたい。それらがきっかけで、たくさんあるスポーツの中から野球を選択してもらえれば嬉しいことだ。
現地に渡って3年と少しの時間が経過した。今回こういった大きなイベントで野球を紹介できる機会を与えてもらったことに感謝をしている。ニュージーランドで野球振興と強化に携わってきた活動が受け入れられてきたといううれしさもこみ上げてきた。世界の各地で同様のジャパンデイが行われているだろう。そんな舞台を利用し、「日本野球」というスポーツ文化を紹介していくことも野球の国際化を提唱している日本野球界としてできることのひとつかもしれない。
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著者プロフィール
- 清水直行(しみず なおゆき)
- 1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。
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