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"世界の野球"【第17回】清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記 「WBC予選大会 現地レポート」

2016年3月4日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 ニュージーランド代表のWBCは残念ながら予選で幕を閉じてしまった。あっと言う間の代表チームでの活動となってしまったそんな、ニュージーランド代表のWBCQの戦いまでを、振り返ってみたい。

 2月6日。オークランド空港から直前合宿を終えた選手やスタッフらとともにWBCQ決戦の地・シドニーへと向かった。シドニーは予想以上に気温が高く、噂通りの日射しで乾燥していた。オークランドとの時差は2時間。シドニー空港に到着するや選手の一人が機内にタブレットを忘れるというトラブルが・・・。取りに戻ろうとしても当然簡単ではない。国際線となると、飛行機は国外にある。一度入国審査を受けて入国しているため、機内へは簡単には戻れないのだ。タブレットが選手の手に戻るまで時間にして約2時間弱。シドニー空港内大型バス駐車場で待機という、なんとも波乱含みの出だしとなった。

 到着2日目、大会初戦での対戦が決っている南アフリカ代表との練習試合が組まれていた。今回招集された代表チームとして初めての対外試合だ。といっても、まだこの日までに代表選手全員が揃ってはいなかった。代表選手の合同練習は2月1日からニュージーランド国内のオークランドで行われていたが、監督や私以外のコーチは2月4日まで不在で、選手も半分程度しかそろうことができなかった。そんな中でも知恵を絞った。まずは試合形式のような練習を取り入れてゲーム感覚を養うことにした。私も何度とバッティング投手を務め、選手の役にたてるように右腕を振った。

 シドニーに到着した日、宿泊するホテルで残りの選手と合流した。とはいえ、連携プレーの確認や全体練習を行う前にいきなり練習試合とは・・・。強化を考えたら、こういったことも課題のひとつだ。練習試合はというと大差で敗北。投手陣は四球も球数の多い内容だった。実はこの試合もそうだが、私以外のコーチはもちろん監督すらもスコアや内容を記さないのだ。初戦に対戦するチームの情報がここにあるのに、と疑問を感じた。
 翌日は練習試合がナイトゲームで組まれていた。対戦相手は、地域のクラブチームだった。大会を想定すると、ナイトゲームを経験しておくことが必要だった。試合はニュージーランド代表チームが勝利した。投手陣は7回まではよく投げてくれたが、その後の投手に関しては評価できる内容ではなかった。

 2試合ともに言えることは、無駄なボールが多すぎるということだ。私は試合前から投手陣には「とにかくチャレンジしてほしい。勝負してほしい」と伝えていた。それは、ホームベースの上のストライクゾーンに投げることであり、投げたボールが打者に打たれることを恐れないでほしいということだ。投手のバックには8人の野手がいる。ストライクゾーンに投げれば、ゲームが動く。ホームランを浴びることもあるが、バックが守り抜いてくれることもある。四球は投手の自滅。それだけは避けなければならなかったからだ。
 だが、ストライクゾーンに投げようと意識はしているのだが、まだ技術がそこまで達していない投手が代表レベルでも普通にいた。これが世界ランキング25位前後に位置づけられたチームの現状でもあった。代表選手レベルですら、「勝負する」という前の段階において課題が多いと痛感させられた2日間であった。(続く)

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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