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"世界の野球"【第11回】清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記「意識してほしいこと」

2015年7月9日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 スポーツには全く同じシチュエーションが存在しないといっていいだろう。もちろん野球もそうだ。
野球は、いわば”常に移り変わる状況の変化”に対応するゲームである。点差であったり、アウトカウントであったり・・・。もっと言えば、心理状況や試合展開もその範囲になるだろう。そこにイニングや点差であり打順や選手の調子などが組み込まれるから、野球というゲームはとても面白い。
この”常に移り変わる状況の変化”の対応は、守備をする場面で多く必要になると私は考えている。ひとつのボールを全員で追いかけるまではいかなくとも、その打球によってそれぞれの役割を果たしていくことが守備に求められる。

 サッカーやバスケットボールは決められたコート内からボールが外に出るとボールデッドになるが、野球はインプレー中にスタンド内やベンチ内あるいは特別ルール対応(球場による)にならない限りボールデッドにはならない。プレーは続く。練習ではそういったケースへの対応や、試合を想定しておかなければならないのだ。打球処理をする選手だけではなく次を予測しておくことがそうであるように、全てのプレーが成功するとは限らないから準備とバックアップが必要なのだ。

 野球は”ミスのあるスポーツ”でもある。仲間が守備でエラーであり暴投などのミスをしたときに必要以上の失点や進塁を防がなければならない。そのことを予測し処理をしている選手に対し、重要になってくるのが聞こえる声で送球するベースであり相手を示す「声」であり「指示」だろう。

 「大きな声をだしなさい」「大きな声で次を指示してあげなさい」。ニュージーランドのナショナルチーム12Uの練習中、私は子供たちに繰り返し指導をする。皆さんの想像通り、すぐに大きな声は出ない。自分のプレーで精一杯で、まだ周りを見る余裕がないからだ。無理もない。これまで習慣的に声を出さなければならないシチュエーション練習に時間を費やしてこなかっただろう。試合などで歓声で声がかき消されるような経験もなく進塁されることの危機感も少ない。そして、子供たちはみなシャイなのだ。そこにどうやって入り込んでいくか…。これからの私の大きな課題である。

 まずは簡単なことから始めたい。小さい声でもいいから声に出して指示すること。みんな連動して守っているのだということ。野球は「準備」「確認」することがいかに重要なのかということを12Uや15U世代には特にしつこく指導していきたい。彼らは、10年先、20年先のニュージーランド野球を築きあげていく世代なのだから。

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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