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"世界の野球"清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記「踏み出す勇気と、最初の一歩」

2017年12月11日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 オファーは突然、舞い込んできた。古巣の千葉ロッテからの1軍投手コーチ就任。今季はチームが最下位に低迷し、「こんなもんじゃないはずなのに・・・」と悔しい思いもしていた。いつか、自分にできることがあればという思いは持ち続けていた。

 チームが必要としてくれるタイミングが、今回だったのだろう。
 日本球界で踏み出す新たな指導者の道は、同時にニュージーランドの地を後にすることにもつながる。一家で拠点を移したが、やがては家族のみんなも日本へ戻ることになる。

 何のツテもないところから始めた南半球での野球伝導の取り組み。現地のたくさんの人たちのサポートのおかげで、少しは蒔いた種が芽を出してきてくれた。ここで別れを告げることは、自分としてもすごく残念な気持ちだった。

「寂しくなりますね。でも、日本で頑張ってくださいね」。現地の皆さんの温かい励ましの言葉が胸に響いた。もちろん、これで終わりではない。ニュージーランドの子どもたちと日本球界との交流、私自身が代表となって立ち上げたポニーリーグの現地支部など、これからもニュージーランドと野球の橋渡し役を担っていきたいと思っている。

 英語が堪能なわけでもない。だからこそ、気付いたこともある。スポーツは、野球はときに「共通言語」になるということだ。アテネ五輪、WBCと日の丸を背負った経験がある。海外で自分の国じゃない代表チームのユニホームに袖を通すことは、そのときとはまた違った責任感も生じる。フル代表で投手コーチを務め、若いU-15やU-18世代のチームでは監督として指揮も執った。

 私自身はメジャーリーグの経験がない。だからこそ、「日本の野球を世界に」という思いで取り組んできた。振り返って、自分なりにもいい経験ができたと思っている。もちろん、野球はまだまだ世界のスポーツじゃない。北中米やアジアだけでなく、もっと広がっていくことが世界的な競技の地位向上にもつながると信じている。

 自分の活動を、球界の現役やOBの人たちがどう見ていたかはわからない。でも、少しでも興味を持った人がいれば、迷うことなく海外に飛び出してほしいと思っている。現役時代にメジャーを夢見て海を渡るのとは、全く違う意味があるはずだ。誠実に行動すれば、道は開ける。サポートしてくれる人たちも自然と集まってくる。大事なことは踏み出す勇気と、最初の一歩だ。

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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