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"世界の野球"インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.3」

2016年9月15日

文・写真=野中 寿人

 前項、前々項で、U-18インドネシア代表チーム、及び、インドネシアとしての国際大会へ臨むに際しての体質改善について述べさせて頂きましたが、この項では、U-18アジア選手権自体について記させて頂き、次項では、他国のU-18代表チームについて述べさせて頂きたいと思います。

 まず、今回のU-18アジア選手権についてですが、やはりアジアの4強である日本、チャイニーズ・タイペイ、韓国、中国といった野球先進国と、香港、フィリピン、タイ、インドネシアといった野球途上国とでの力の差が、あまりにも大きすぎるという点です。
 1つの実例を挙げてみますと、今大会のU-18日本代表は高校3年生でチーム編成されていたのに対し、自国の野球環境やその他の事情から、香港やインドネシアは高校1年生でチーム編成がされていました。想像をして頂ければお分かりと思いますが通常、高校3年生と1年生とが試合をした場合どうなるのか?また、その高校1年生は、日本の野球環境で育った選手ではなく、幼年期から乏しい野球環境で育ち、まして、野球というスポーツが人生の選択肢には全く乗っからない社会環境の高校1年生だった場合の対戦結果は、言うまでもなく無残な結果となることでしょう。それが、今大会の日本とインドネシアとの試合結果なのです。厳しい言葉で言ってしまえば、野球先進国と野球途上国が同じ国際大会の場で戦う場合において、この様な“野球以外での差”は歴然としており、試合自体に無理があるということです。

 これは、国代表のTOPチームの国際大会についても、同じようなことが言えますが、対戦する前から、勝敗が決まっているものほどお互いにつらいものはありません。野球途上国からしてみれば、野球先進国と試合が出来る機会は少なく、負けに関わらず試合を行いたいのが本音ですが、野球先進国に対して士気的に失礼のない試合をすることや、最後まで士気を持ち戦うことしか出来ません。野球先進国の選手たちも全員が、その旨を感じてくれるとは思っていませんが、ごく数人の選手のみには伝わることでしょう。しかし、この部分だけしか提供出来ないのが実情です。反対に、野球先進国から得る部分についても、野球途上国の選手個々のレベルから言って、「見て習得する眼力」が備わっていないのも実情であり、選手全員に得るものがあるかという部分には大きな疑問が生じます。同時に、この事は、野球途上国の現地人指導者にも言えることなのです。
 野球ファンの皆様方から見た場合、野球途上国の野球事情が不透明であるために、試合の結果で野球途上国の野球状況を判断されると思いますが、野球途上国の野球事情を多く発信する媒体によって、その実情を多くの方々に把握して頂き、見る角度を少々変えることによって、最初から勝敗の決まっている試合も、今回のような盛り上がりに欠けるようなことは、少しは改善出来るのではないかと思う次第です。

 そして、東京オリンピックでは野球競技が復活しましたが、この話で盛り上がるのは野球先進国だけで、野球途上国からしてみれば、自分たちには関係のない競技大会と位置づけされているのが実情なのです。参加国枠の土俵にさえ乗っからない競技大会への関心は生じてきません!つまり、野球をグローバル化する動きを真剣に考えなければいけないのです。この事は、今大会の野球先進国と野球途上国との試合結果から読み取れます。今大会に出場した野球途上国には、各国に日本人の指導者の存在があります。皆様、それぞれの国で野球の発展と向上に努めておられ、その成果を出しておられますが、正直な話、野球先進国と勝負を張るレベルに引き上げることは困難です。アジアの野球先進国として、野球途上国のレベルを引き上げる動きをして欲しいと強く要望を致す次第です。
 来年2017年はTOPチームによるアジア選手権大会があり、2018年にはアジア競技大会とU-18アジア選手権大会を迎える中で、この様な国際大会がアジアの3強ないし4強だけで競う国際大会で終わってしまわない為にも、今一度、野球のグローバル化を、アジアを含む、世界の野球界全体で考え、発展と向上をさせるプロジェクトを企画実行すべきです。

 そして、もう1点は審判についてです。まず、「野球は誰が行うのか?」という基本的な部分を再度考えてもらいたい。各国代表の選手たちは一生懸命にプレーをしています。真剣に勝負をしている中で、明らかに分かるミスジャッジ、試合の明暗を大きく左右するミスジャッジが、あまりにも多すぎる。今大会で起きたチャイニーズ・タイペイと韓国との延長10回、タイブレークでの場面は、決勝進出チームの決定を大きく左右した1塁塁審のミスジャッジだと判断します。この様なミスジャッジやルール執行の曖昧さは今大会に限ったことではありません。国際審判としてのレベルを疑ってしまいます。選手たちのことを考え、もっと質の良い審判員が試合を統括することが必要です。際どい判定の場合にはVIDEO判定の導入も必要なのではないでしょうか?
 野球は野球をプレーする選手たちがいるから成り立つもので、野球をプレーする選手たちが居なければ審判員はいらないのですから・・・(続く)

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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