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"世界の野球"インドネシア野球「野球キャラバン ジョグジャカルタ編」

2017年12月19日

文・写真=野中寿人

 昨年より株式会社フュービック/Dr.ストレッチ様と、当インドネシア財団法人BICとでの共同開催をしている野球キャラバン。昨年度が3回、そして今年度も2回の野球キャラバンを開催し、今年度の最終となる野球キャラバンは、中央ジャワに位置をし、古い歴史と世界遺産が残るジョグジャカルタ市にて開催をさせて頂きました。

 このジョグジャカルタという地域は、インドネシアで唯一、王室制度が残っている特別行政都市であり、王宮をはじめ、ガムラン音楽や影芝居、そして、ブロボドゥールやプランバナンといった有名な世界遺産がある古都的な観光地となります。

 ジョグジャカルタでの野球キャラバンは、ソフトボールグランドを使用しての州内の野球とソフトボールのクラブチームへの各野球動作指導とストレッチ講習、そして4校の学校訪問と、突撃キャラバンを施工しました。この中でも、特に印象が強かったのは、プランバナン世界遺産の駐車場で突撃キャラバンを決行したことです。当初、国立ガジャマダ大学内の広場に出向いたのですが、子供たちが全くいなく、即興の思いつきでプランバナン世界遺産へ向かったのでした。

 プランバナン世界遺産を見学に来ていた学校の生徒たちや、駐車場内にあるモスキューに両親と一緒に礼拝に来ていた子供たちを集めて野球キャラバンを施工。帰宅の時間も無視して、延々と、無邪気に「野球ごっこ」に没頭していた子供たちの姿がとても印象的でした。

 学校訪問では、大きな歓声をあげてキャラバン隊員のもとへ走り寄ってくる子供たちの満貫の笑顔が今でも忘れられません。また、当初は予定をしていなかった小学校の生徒たちが70名近くも飛び入りで野球キャラバンに参加をして来ました。本当に嬉しいことです。

 昨年、今年と、合計6都市で野球キャラバンを開催させて頂いた感想としては、インドネシアの子供たちは「興味を持ったら、とことん、やってくれる」という性格が強いことです。このことから、本格的な野球の前の段階で、用具等の問題も踏まえながら、まずは、「柔らかいボールを使用しても手打ちの野球ごっこ」から試してもらうことを来年度は多く取り入れて、もっと身近な野球として「野球ごっこ」を提供し、ゴムボール1つで「野球ごっこ」が出来ることを広め、この「野球ごっこ」から野球へ繋がって行く環境の構築を、強く前面に押し出して行きます。

 また3年目となる来年度は、更に突っ込んだ部分として、開催地毎に、その地域の現地人指導者を対象に、野球動作とストレッチに際して密度の濃い講習プログラムを取り入れて行きます。現地人指導者たちの現地での立場を尊重して、キャラバン開始の前、すなわち我々が現地入りした日に特別に講習を設け、子供たちと同日での講習を避けて行い現地人指導者たちに素になって講習を受けてもらいます。そして講習後に筆記と実技の試験を受けてもらう。この工程を経てから実際に子供たちへのキャラバンに参加をしてもらうプログラムです。

 他のプログラムとしては、グランドや学校訪問の短い時間帯だけでなく、子供たちとの時間を共有して、お互いの文化や風習を語り合い、日本から持参した野球のビデオ等を子供たちに鑑賞をしてもらい、もっと野球を身近に感じてもらい、夢を持ってもらう、逆に、キャラバン隊にとってみれば、多くの相違を直に感じてもらい、日本での仕事や海外店舗勤務、そして、今後のインドネシアでのキャラバン活動に活かしてもらうことを目的とした、合宿キャラバンをも取り入れて行きます。

 更に、日本から渡航するキャラバン隊と現地から同行するキャラバン補佐隊の人員を合わせて即興チームを編成して、本格的な野球でも良し、野球ごっこでも良し、キャラバン開催地で交流試合などを行うことも考えています。

 日本人とインドネシア人が「出会え」「触れ合える」という、通常では有り得ない貴重な機会があるのですから、単なる上辺だけでなく、もっと深く掘り下げた野球キャラバンを施工したいと思います。

「子供たちに未来を!」

 この信念をブラさず来年度も野球キャラバンを開催して行きます。来年度は、次回のインドネシア国民体育大会の開催地である、ニューギニア島パプア州の州都ジャヤプラからも野球キャラバン開催の依頼が来ています。我々も、この野球キャラバンを通じ、異なった独特の文化を持つ地域を巡回させて頂けることに大きな感謝を致しております。来年度も宜しくお願い致します。

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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