文・写真=野中寿人
インドネシア代表チームや諸々の野球行事を統括するインドネシアアマチュア野球連盟。その組織は、4年毎に国内連盟支部を交えた選任選挙を経て、人事の改正を行なっています。2013年春に開始した現人事体制も、この2月には任期満了を迎え、来たる3月からは新人事へと移行されます。
毎回の人事改正にて、そのリーダーとなる会長就任者の人脈と運営能力がインドネシア代表チーム運営や各国内外大会への参加または開催、その他のプロジェクトを遂行させる上で、大きく影響してきます。野球途上国のインドネシアにおいて求められるのは、リーダーである会長以下、幹部やスタッフに至るまでが組織の意味を把握し、組織内にマネジメントシステムが稼働できる、頭脳的で行動的な集団を形成することなのです。
「改革」や「改善」についてどの様な動きをしなければならないかは理解している訳で、その改革を遂行できるのか?また、従来の連盟の取り組みにはない事項について、連盟自身それ気づけるか?外部からの意見を吸収できるか?これらの点が最も重要になってきます。
連盟として正常に稼働をしていく為にも、以前からの狭い領域での運営と、しがらみや枠規制による人事構成で、無機能な状態を繰り返しては話になりません。やはり、そこには、新会長となる者の判断、決断においての、”私的無情”の采配が鍵となってきましょう。
組織の判断や決断は、その組織にとって常に、最良を求めるものです。リーダーという立場に置かれた者は、絶対的に成果や結果を示せなくてはいけません。しかし、仮にそのプロセスの工程内に、私的損得の感情が絡んだ場合、自然と判断や決断に歪みが生じ、周囲からの共感を得るのも困難になります。また、判断や決断に際して、色や理屈を付けて誤魔化したりすることも多々、見うけるものです。この誤魔化しこそが、俗にいう”私的有情”に値するものです。
組織の立ち上がり、すなわち、創始時期に作られた枠組みは、一定の時期を経過し、次の工程に向かうにタイミングになると、既存の枠組みが機能しなくなるものです。
環境や諸条件が変化する中では、昨日の適任者が、必ずしも、今日の適任者にはならず、過去にどんな功績や実績を残し示した者でも、次の工程の中で成果を示すことが出来なかったり、向上性の維持が乏しく、マイナス要因の比重が多いのであれば、役職や地位から退いてもらわなくてはなりません。この様な決断も、リーダーの資質を問う上で、最も重要な部分です。以前からの風習や習慣などから、理不尽だとか、切れないだとかの「自己の思い入れ」や、周囲の意見からの、友情的・同情的な見解ばかりを聞き入れるようなことでは、組織としての未来はありません。
リーダーとして、自己の気持ちをゼロに保つこと、すなわち、”私的無情”になることによって、非情とも思える判断や、決断を下すことが出来る訳であり、ここ1番での状況や、タイミングを正しく判断し、周囲に与える影響を、最小限とする為の、絶対的な要素となるのが”私的無情”と言えるのではないでしょうか。
そして、組織のキャビネットとなる各人事には、企画立案やマーケティングをはじめとした運営起動の考えを持ち、かつ、行動が出来る人事を据えることで、運営稼働に際しての目的意識の強い集団とさせることも重要なことです。キャビネット内の役職に座っているだけで、日々の動きや成果もなく、国や政府から援助される国内や国際の複合競技大会だけを待ち、大会の業務をこなす様な人材は要りません。
重要なことは、選手を主役として考える思考と、連盟内部の人員で必要な資金を獲得するためのビジネス起業、スポンサーやドネーションを獲得するチーム/部署の編成、外部機関や人材による資金獲得オペレーション、会長自身の個人的資産といった、複数の資金源となる柱をしっかりと構築することなのです。
ここでいう組織内部での資金獲得のビジネス起業とは、内部人員にて予算を確保し、ビジネスを仕掛けるものです。現他社のビジネス形態に便乗をし、手数料を摂取する方法でも良いでしょうし、自然、天然、需要性の物資販売を手がけるような方法も考えられます。また、このビジネス構築の中で、選手の雇用をも絡められれば、選手への生活補助や保証にも連動していきます。
次に、連盟自体でスポンサーやドネーションを獲得する部署を設け、チームごとに分けて、日々その為だけの動きを行うことも重要です。特に、野球のステータスを上げる企画宣伝部署を併用して立ち上げ、人気のある団体や個人とのコラボによるイベントの開催からグッズの販売を手がけたり、各種ボランティア活動への参加による社会的貢献など、野球のネット放送やアニメ放送、その他諸々の活動にて、メデァアへの露出度を図り、資金獲得の動きに連動をさせます。
また「外部機関や人材による資金獲得」は、連盟外部付けとして、野球の向上と発展における、諸々のプロジェクトを遂行するものです。
以上の様な資金源の幹をつくることと、国や政府からの資金援助を合体させ、また、会長職就任者の個人的資産の運用や、先出しをも絡め、運営能力を高めていくべきです。
また、連盟本部と連盟支局間の力関係についても明確化することが、新しい改革として望まれます。現状の様に連盟本部と連盟支部の力量関係が逆転していることが、国際大会よりも国内大会の方にチーム編成を優先してしまうことにつながってしまいます。
全ては、資金源の獲得と確保があってこそ、各プロジェクトの立案と施工が可能になるのであって、先に立つ物が無くては、何も出来ず、野球の発展も向上もありません。加えて、インドネシア代表チーム各カテゴリーの国内外の大会開催から強化練習、そして、選手たちへの給与の支給、学校や就職の斡旋、国外への野球修行や野球留学、野球就職等までをトータル的にカバーし、更には、指導者育成と審判育成、段階別ライセンスの発給、各州への向上プロジェクトの提供と実施等も、連盟の任務となることを肝に銘じなければなりません。
そして、もう1点、組織のリーダーとして、全権委任に徹した組織の構築が必要です。組織内の各セクション統括者への、責任と向上心を植えさせる為にも、プロジェクトや任務を任せた以上、その途中段階において、一切の口出しや、手出しはしない。これは、統括者の下に位置する者を惑わさないことに対して、大変、重要な組織としての鉄則です。
任せた以上は一切手を出さず、上から状況を把握し、ブレが生じた場合には、統括者を呼んで軌道修正をすれば良いのです。また、任された者からみても、信用や面子に関わることです。しかし、他人の領域には入らないと公約をしても、性格的に結果として入りこんでしまい、全てを統括したがるというリーダーの存在を多く見ます。これでは、健全なる組織の構築は成りえません。
野球でのチーム編成における組織の構築も、団体やサークルでの組織の構築もしかり、企業チームにおける組織の構築にしても、大小の規模や詳細の比重は異なるにせよ、組織というものの、基本的な鉄則と、その構築は、全て同じなのです。
また、連盟は「インドネシア アマチュア ベースボール&ソフトボール連盟」という正式名称からも、野球とソフトボールの連盟として成り立っておりますが、野球とソフトボールの連盟分離も国と交渉を進めるべきです。
ともあれ、今までが、運営能力が乏しく、稼働が、ままならないのですから、通常の人事改正だけでは改善には至りません。思い切った改革を当て込まなくては修正不可能です。選手あっての連盟組織という意識を忘れず、選手達の野球に対する情熱と、おのおのに抱く野球での人生/未来に向けた期待に対して、多くの道を開き、提供をし、選手達が目的とする場所へ、導き運ぶことと、まとわる関連部分を円滑に向上させることが、インドネシア アマチュア野球連盟の役目です。
以上の内容を、インドネシア アマチュア野球連盟の新人事に期待をし、同時に、他方面において、組織を構築される方々や、同類似問題を抱え、組織の改善、改革を必要とされておられる方々にとって、1つの参考材料として頂ければと思う次第です。
- インドネシア野球「アジア競技大会 大会に向けての準備状況」
- インドネシア野球「教育としての野球-インドネシア野球キャラバン」
- インドネシア野球「インドネシア代表チームの編成、及び、最新のグラウンド状況」
- インドネシア野球「アジア競技大会への準備」
- インドネシア野球「東京都高野連様との提携」
- インドネシア野球「第13回 BICレッドソックス深谷組カップ」
- インドネシア野球「野球キャラバン ジョグジャカルタ編」
- インドネシア野球「インドネシア女子硬式野球始動~オーストラリアへ!」
- インドネシア野球「日本の各野球組織、団体との提携へ」
- インドネシア野球「野球キャラバン スラウェシ島マカッサル編」
- インドネシア野球「インドネシア野球の方向性 野球動作の統一」
- インドネシア野球「子供たちに未来を!2017野球キャラバン」
- インドネシア野球「高度な野球環境との同化」」
- インドネシア野球「卒業旅行と野球 バリ島」
- インドネシア野球「インドネシア アマチュア野球連盟人事改正(リーダーと組織)」
- インドネシア野球「2017インドネシア代表チームの運営」
- インドネシア野球「2017年インドネシア野球向上各プログラム」
- インドネシア野球「2017年 インドネシア代表ナショナルチーム展望」
- インドネシア野球「“野球国力”ランキング査定システムがもたらす野球衰退」
- インドネシア野球「国際大会開催不能による野球衰退の実情」
- インドネシア野球「非行麻薬防止 突撃キャラバン」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン ジャカルタ編」
- インドネシア野球「野球教室とストレッチ講習」
- インドネシア野球「大会結果とセレクション結果」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.4 (大会の主旨)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.3 (日イ友好 国際親善)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会 Vol.2 (付加価値の提供)」
- インドネシア野球「国内クラブチーム大会開催 (インドネシア代表チーム選手セレクション)」
- インドネシア野球「ワールド・ベースボール・クラシック 予選について」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 総評」
- インドネシア野球「第19回 インドネシア国民体育大会 開催」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン スラバヤ編」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権 Vol.5~ストレッチングトレーナの導入~」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.4」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.3」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.2」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18アジア選手権 Vol.1」
- インドネシア野球「U18 インドネシア代表強化練習 ~台湾へ」
- インドネシア野球「第11回 BFA U-18 アジア選手権大会 参加」
- インドネシア野球「深谷組硬式野球部 野球研修を終えて」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~後編~」
- インドネシア野球「Fu×Bic 野球キャラバン バンドゥン~前編~」
- インドネシア野球「日本プロ野球名球会野球教室」
- インドネシア野球「野球キャラバン スタート」
- インドネシア代表「2016年 アジア競技大会強化プロジェクト開始」
- 「社会人野球への挑戦」
- 「ソフトボールとの関係」
- 「野球動作〜異国で日本人選手の育成はいらない」
- 「泥水を飲み続けて修正へ導く」
- 「ライセンス制度の導入」
- 「現地人指導者の権威と権力」
- 「野球をどの様にして国内の学校に広めるか」
- 「インドネシア野球向上と発展プロジェクト」
- 「外国人監督として注意しなければならないこと」
- 「インドネシア代表 外国人監督としての宿命と任務」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(後編)」
- アジア選手権「第27回 BFAアジア選手権 インドネシア代表 総評(前編)」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 中国代表戦」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 特別な2つの国歌」
- アジア選手権「第27回BFAアジア選手権 パキスタン代表への挑戦」
- アジア選手権「一難去らずにまた一難、第27回アジア選手権大会へ向けて」
- アジア選手権「インドネシア人の体について探求する」
- アジア選手権「インドネシア代表ナショナルチームの選手選考」
- アジア選手権「スポンサー獲得とインドネシアからの教示」
- アジア選手権「インドネシア、国際大会への参戦」
著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球 「福島県×ネパール シャクナゲ交流」2023年10月2日 |