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"世界の野球"インドネシア野球「インドネシア野球の方向性 野球動作の統一」

2017年8月18日

文・写真=野中寿人

 先の5月、4年毎に行なわれるインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の新会長選任選挙、並びに、各キャビネットの人事選任が行なわれました。この人事改正は2月に行なわれる予定でしたが、旧人事体制の都合により5月に変更されての開催となります。

 簡単にインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟と、統括配下のインドネシア代表ナショナルチームの経緯をお話し致しますと、インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の発足に際しては1965年頃となり、野球がインドネシアに取り入れられたと同時期に発足。しかし、野球は伝道されてから1年未満で消滅をし、ソフトボールに変更をされ、1990年中旬以降まではソフトボールを主体として連盟組織が成り立っていました。そして1990年後半に野球が再び行なわれるようになり、野球を加えた男女ソフトボールの3部門構成での運営となり今日に至っております。

 2000年前半のインドネシア野球は、男子ソフトボールの代表ナショナルチームあがりの選手らと、日系のリトルリーグ発足に便乗した形にて現地クラブチームで育ってきた青年たちにて編成をされ、更にはタイやパキスタンなどの実力が向上する以前ということから、いきなりBクラス上位に入り込みます。投手力も135キロを出す選手が2名おり、加えて金属バットの使用から、フィリピンにも打ち勝つ実績を示した時代です。
 また、この時代にJICAから野球指導でインドネシアに来られた堤尚彦氏(今夏甲子園に出場された、おかやま山陽高校野球部監督)の指導功績があります。また、インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟も政府官僚職の方をスポンサーに付けていた時代で、資金関係も非常に円滑だった為に、国際大会のホスト国や各国際大会へ参戦をしています。

 しかし、2004年から2005年になると政府官僚職のスポンサーを失い、インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟は政府からの支援が投下されない国際大会への参戦が厳しい状態に陥っていきます。また、このインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の統括不能に比例して、インドネシア代表ナショナルチームも指導者、選手共に慢性化が浸透をした時期で、特にこの慢性化の現象を象徴する例としては2005年の東南アジア競技大会参戦での強化練習期間中、夜な夜な選手たちが合宿所から脱走していた実例や、東南アジア競技大会ではフィリピン代表に対しては、コールドゲーム寸前の大差で敗北を喫し、3位決定ではミャンマー代表にかろうじて勝利するなど、加えて有力だった投手力も不適合な動作上の問題とメンテナンスの不備から既に怪我でリタイヤをしており、打撃面も木製バットへの対応が出来ず、フィリピン、タイ、パキスタン、香港などの他国の向上とは反してインドネシア野球は低迷化していました。

 2007年から2016年に関してもインドネシアアマチュア野球連盟の体質は悪化を辿る一方で、資金的には政府からの支援が投下される東南アジア競技大会以外、自力では国際大会へは参戦出来ない状態が続きます。その結果として、インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟としては2007年、2011年の東南アジア競技大会への参戦を果たしただけであった。世界ランキングに反映される最も重要なアジアカップ、東アジアカップ、アジア選手権大会への参戦には、インドネシア国内の日系企業を中心としたスポンサー獲得及び支援による参戦に依存する有様でした。

 一方、インドネシア代表ナショナルチームに関しては2005年のドン底から一転し、2009年のアジアカップでの優勝からアジア選手権大会参戦、また2015年の東アジアカップ準優勝からアジア選手権大会参戦という起死回生を図りますが、やはりインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の失態から若手育成が疎かな状態なことは隠せず、2017年以降の数年間はこの代償が付きまとう状態と予測されましょう。

 以上が、インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟とインドネシア代表ナショナルチームの今日までの経緯となり、今回のインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の人事改正に伴い、ハイパフォーマンスディレクターとして、インドネシア代表ナショナルチームの統括と野球向上に際する各種プログラミングの構築、施工を依頼されました。

 インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟として、いかに自立を押し進めて行くか?第一に挙げられることはやはり資金です。政府以外の何処から資金を確保するのか?また、その動きが出来るのか?以前より問題となっている、この資金確保が最前提となり、平行をしてインドネシア国内の野球状況の整理と施工が重要なこととなります。

 資金の確保については、以前の項でも、再三述べてきておりますので、この項では省略をさせて頂きますが、今回の新人事の新設セクションに故スハルト前大統領の長女であり、以前からバレーボール競技を支援されている、トゥトゥト女氏が入閣をされていることからも、現地スポンサーの獲得に大きな期待が寄せられます。また、整理についてお話しをすると、野球創始からの向上の問題点の整理と把握、そして削除から改正となります。

 では、何が一番の問題かというと、今まで間違って指導をされてきた野球動作です。これは非常に深刻でインドネシア国内全土への改善が必要です。更にいうならば、インドネシア人の身体構造に適合する野球動作を指導する者の育成。すなわち、インドネシア人の身体構造に適合した野球動作を把握し、指導出来る者だけが、選手へ指導することを認可させる制度の施工であり、同時に妨げとなる志向性の削除になります。
 この部分にメスを入れることは、個人、または団体として、以前から幾度となく訴え改正を試みていますが、やはりインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の冠があるのと無いのでは意味が大きく異なります。インドネシア野球の向上に際しての、問題点を示し、証拠を提示し、改善への方法を提供しても、多くの者から、よそ者としての否定と反抗を受けてきたのが実情です。しかし今回、改革をするにあたり、生半可な矯正では改革には至らず、まして成果は期待出来ません。要は、現在のインドネシア代表ナショナルチームの選手たちや、その下の年代の選手たちの様に、これ以上選手たちを犠牲には出来ないのです。

 昨年のU18アジア選手権大会でタイ、香港、フィリピンとインドネシアを比較させてもらいましたが、全ての面において、インドネシアに劣勢が見られたのが正直な部分です。これも、ここ10年毎、曖昧な野球動作の指導を認可してきた、若手の育成を怠ってきたインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟の失態です。この失態の大きなツケとして。同年代のカテゴリーではまともに勝負をしても、インドネシアの現力量では、フィリピン、パキスタン、香港、スリランカ、タイといったアジア第2グループの国々には勝てません。こと投手力についての劣勢は突起しています。

 上記の内容説明から、まず野球動作を野球創始からの欧米式な野球動作から、インドネシア人の身体構造に適合する東洋的な動作にインドネシア国内全土を統一しなければなりません(下記、補足説明)。そして、インドネシア国内の全指導者へテストを受けさせてライセンスを発給。すなわち、指導者ライセンス制度を本格的に導入させることです。これは10年前、当時のインドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟へ提案をし、また4年前にも、前インドネシアアマチュア野球&ソフトボール連盟に直訴したことです。しかし、施工はされず、4年前には指導者ライセンスカードの試作品の作成までで、やはり実際には施工はされませんでした。しかし今回は、自分のハイパフォーマンスディレクターという職務からも100%の施工を試みたいと思っています。

 指導者ライセンスについては、数段階にランク分けがされた形となり、幼年期、学校(小学校、中学校、高校、大学)、リトルリーグやポニーリーグ、クラブチーム、州関係(高校総体、国体)、国代表チーム(コーチ、監督)などに分かれ、成果と進級テストによって階級を上げて行くものです。また、原則として任期中での、国代表と州関係やクラブチームの同時期の統括は不可。指導者ライセンスを取得していない者の各組織への指導は一切不可とします。仮に指導者ライセンスを取得していない者が指導するチームが存在した場合は、いかなる大会の参戦も不可。加えて、諸外国からの野球教室開催については事前審査によって、その適合性から開催の可否を判断、もしくは公認の野球教室としない。以上が、大まかな内容となります。

 更に、現地人指導者の育成です。正直な話し、外国人がいつまでも現場を仕切ってはいけないのです。インドネシア国内には、数千社の日系企業が進出をしています。各日系企業とて、そのミッションの第一条件として、現地や現地人へのノウハウの伝授から自立へのサポートが掲げられています。代表ナショナルチームとて全く同じことです。これは外国人や外国人組織が、諸外国で活動をする役割だと思っています。従ってチーム編成、選手統括、強化練習の内容、試合での戦略は勿論、必ず問題点として避けては通れない支援獲得方法や人脈に至る全てを、これからインドネシア野球を統括して行く資質有能な現地人へ伝授していくことに拍車をかけていくことになるでしょう。

 来年の2018年は、春の時期にアジア大会のプレ大会として東アジアカップをインドネシア開催にて誘致する計画もあり、そして8月のアジア大会。また再来年の2019年にはアジア選手権大会(兼、東京オリンピックアジア最終予選)と、東南アジア競技大会(ホスト国フィリピン辞退の為、現状、開催国が棚上げの状態)があり、今後各日本の野球組織、団体との提携を図り、数々のプログラムを施工していかなくてはなりません。

補足説明
野球動作の統一性とは、その選手の身体構造に適した動作を当て込むことであり、何が何でも東洋的な動作に統一することではありません。例えば、ひとつの判断基準としては、家系の系統内の遺伝、すなわち混血度に大きく関係をするものであります。要は身体構造と動作のアンバランスを防ぎ、適合性を重視した指導という意味になります。

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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