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"世界の野球"アジア選手権・日本人監督の挑戦「インドネシア代表ナショナルチームの選手選考」

2015年9月15日

文・写真=野中寿人

 第3回目は、インドネシアにおける代表チームの選手選考についてお話をします。

 インドネシアでは各州にクラブチームがあり、各クラブチームの中から優秀な選手が州の代表チームに選ばれ、国民体育大会で優勝を競います。国民体育大会は4年に1度開催され、予選大会と決勝大会の2つの大会に分かれています。
 また、国民体育大会とは別に、各クラブチームによる国内選手権なども毎年開催され優勝が競われていますが、各州の代表チームの中からインドネシア代表(ナショナルチーム)の選手選考を行い国際大会参戦用の国代表チームが編成される仕組みになっています。

 インドネシア代表チームの選手構成については、どうしても首都のジャカルタ州をメインとして、その近郊である西ジャワ州やランプン州、そして東ジャワ州、東カリマンタン州などの選手で占められる傾向にあります。古くからソフトボールが盛んに行われてきた地域であることが要因です。選手構成の比率についてはジャカルタ州からの選手が80%以上となり、インドネシア野球の偏った発展がここに見られます。いわゆる地方州の野球向上がなされてこなかったという問題点が大きく浮彫となっているのです。
 私が2009年のアジア選手権大会参戦を最後として代表監督を辞任し、地方州である東ジャワ州代表チームの監督に就任をしたのも、この様なインドネシア野球の偏った発展の縮図を崩す為でした。

 限られた州だけでは選手の絶対数にも限りがあります。また、地方州出身の選手は首都ジャカルタと比べて性格的な気質の強さを持ち合わせています。現在、国内で約1万2千人の野球人口があり、今後、益々、野球人口が増える状況の中で、野武士の様な地方州出身選手の人材発掘と育成がインドネシアには必要です。 
 かと言って、国内で1番野球が盛んで、インドネシア代表ナショナルチームへ多くの選手を輩出しているジャカルタ州にしても、140キロのスピードを出すピッチャーは存在しません。「この原因は何故なのか?」この部分は非常に奥が深い為、次の第4回目に記してみたいと思います。

 さて、今回の「第27回アジア選手権大会」のチーム編成は、国内の国民体育大会予選大会の日程と重なってしまい、先の東アジアカップ準優勝の選手たちのほとんどが国民体育大会予選大会への出場を各州から義務付けられており、第27回アジア選手権大会への参戦がままならないという緊急事態に陥りました。そこで急遽、既に引退をした選手たち、男子ソフトボールへ転向した選手たちでチーム編成をしています。そしてチームの強化練習も資金的な要因から、わずか9日間という前代未聞の異例な形になっています。
 従って、この「第27回アジア選手権大会」参戦の主旨は、西アジアカップ優勝のパキスタン代表との戦いだけに標準を合わせての参加となります。チームの仕上がりは言うまでもなく、選手たちの基本的な体力部分についても不十分過ぎるチーム状態になります。資金的な問題だけならともかく、今回の様な選手編成は非常に残念でなりません。

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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