文・写真=野中寿人
この項では、今大会で開催した野球教室と、ストレッチ講習について記したいと思います。特に、今回行われた野球教室の形式においては、皆様方にご参考にして頂ければと思います。
今大会期間中、優勝決定戦以前の試合において、東都準硬式野球連盟選抜チームとインドネシアのチームが試合を行なった直後の空き時間に、対戦相手に対して野球教室を開催しました。
以前からのレッドソックスカップでも試合終了から日没までの時間に、参加チーム全体を対象とする野球教室を開催し、フィリピンをはじめとした他のアジア野球途上国にまで評判になったことがありますが、東都準硬式野球連盟選抜チームが今大会に開催をした野球教室の様子をご紹介させて頂きますと、野球教室の対象が「対戦相手限定」となっており、野球教室前の、実際に試合をした経過内での、短長所を明確に捉えて、その題材を野球教室に活用している為、実に密度の濃い内容の野球教室となっています。
また、指導を受けた内容が、次の試合の中でしっかりと活かされた形で現れており、野球教室で指導を受けた選手個々の向上に直結をしていました。
これは、東都準硬式野球連盟選抜チームの人員の問題もあり、マンツーマン以上の複数の人員が1人のインドネシア人選手に張り付いて指導が行えるという最大の利点がもたらす結果となっています。
つまり、以前から述べております様に、指導側が野球教室を開催しただけで、受講側には指導の要点が伝わらないという、開催側の自己満足的な野球教室ではなく、理にかなった野球教室になっているのです。
考えてみて頂ければお分かりと思いますが、例えば、野球教室において、指導側が2人から3人という人員に対して、受講側が50人以上いる野球教室では、せいぜい5人から10人程の受講側の選手にしか指導は伝わりません。他の受講側の選手には指導が行き届かないというのが実際の話です。
開催側も野球教室を開催したという既成事実を、受講側の選手らと集合写真を撮り、記念品などを贈呈して終了する形がほとんどではないでしょうか?
指導を受け届かなかった受講側の選手たちに残るのは、記憶として、その場に参加をしていたことだけで、指導内容の要点を一応は頭に入れますが、身体にまでの浸透は無く、その残像さえ残りません。
時間を使い、労力を費やし、更には、受講側の選手たちに大きな期待感を持たせながら、開催側の自己満足で終わる野球教室なら、やらない方が良い。やるからには受講側の選手たちが個々に抱く疑問点のヒントを得る為に、指導者に、喰らい付いてくる様な野球教室を開催しなければ駄目だということです。
また、開催側の指導者も、感覚として身についている高い技術の部分を、レベルを下げて言語として指導をすることは、非常に良い経験となり、今後の人生の中でに活かされることでしょう。今大会で東都準硬式野球連盟選抜チームが実施した野球教室は、理想的な良き見本となる姿を示していると考えます。
そして、日本から、もう1つの組織団体が、今大会で特別講習を開催してくれました。その組織団体とは、今年度よりインドネシア代表チームと提携をしているDr.ストレッチ(株式会社フュービック)です。
Dr.ストレッチのトップトレーナーから、今大会に参加した東都準硬式野球連盟選抜チームと、インドネシア国内クラブチームの選手たちへ、ストレッチ講習を実施していただきました。
個々の身体パフォーマンスと維持は、技術面に連動することからも、ストレッチングは、日頃から必ず行っていることです。しかし、現状、行っているストレッチングは、Dr.ストレッチの施すストレッチングの60%程の内容でしかなく、1つ1つのストレッチングの内容を把握、理解をして、形式上のストレッチングにならない様にすることが大切であると、今回の講習を見て感じました。同時に、一見、浸透している様に映るストレッチですが、それは、ごく一部の範囲であり、各野球組織への浸透は、まだまだ薄いということも痛感したものです。
現役時代に自分にも経験がありますが、ハードな実技練習の、息抜きとしてストレッチングの時間を当てこんでしまう傾向や、単なるウォーミングアップとして、惰性でストレッチングを行ってしまう傾向が強いものです。
ストレッチングとは何かという確信部分を把握し、日々のストレッチングを正確に、的確に、継続的に行うことによって、上のランクを目指すハードな実技練習がこなせるという意識の改善。そしてそれを日々実行していくことの大切さを、東都準硬式野球連盟選抜チーム、インドネシア国内クラブチームの選手たちは、今回のDr.ストレッチの講習から学んだことと思います。
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著者プロフィール
- 野中 寿人(のなか かずと)
- 1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。
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