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"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国ネパールの野球「協働」

2021年3月22日

文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)

 前回の記事でも述べたように、私たちネパール野球ラリグラスの会(以下、ラリグラス)の活動は変革を迫られている。「協働」の理念の下、1999年に学生仲間が「これがボールです」といった具合にゼロから始めたネパール野球の活動であるが、活動を始めたときからオリンピックという夢も抱きつつ活動を行っていた。一時、野球はオリンピックから外れたものの、東京オリンピックでの復活が決まった。それに呼応するかのように、ここ10年間はネパールも国際野球連盟に加盟したり、国際大会へ出場するなど他国と関わる活動も行ったりしてきた。しかし、その一方で、活動の原点であるネパールの子どもたちと向き合う活動がずっとできていたかというと、必ずしもそうではない。また、2019年12月には、ネパール野球の自立、つまりはネパールの人たちによる自主的な運営を具現化する意味も含めてイッソー・タパ(元関西独立リーグ・06ブルズ投手)がラリグラスの理事長に就任したが、コロナ禍もあって活動は難しい状況にある。ネパールの現地においても、昨年はロックダウンなどで野球どころではなく、以前と比べ野球熱が下がっているという声も聞こえてくる。

 特に近年、私たちはネパール野球の自立のみに注力してきた感が否めない。私たちは活動開始当初から20年で現地の人たちによるネパール野球の自主的な運営を目標としてきた。そして、ラリグラスが活動20周年を迎えた2019年、その年に東京オリンピックの予選が重なったこともあり、その目標に縛られすぎて、焦りから歪みも生じてきた。

 例えば、2011年以来、ネパールは国際大会に何度か出場している。最初の頃の代表チームにはネパール野球の活動が始まったポカラ市のチームから選手が選ばれた。私たちがポカラ市で活動を始めてから10年間は、日本から指導員が現地に赴き長期間に渡って滞在しながら練習を行うことを繰り返していた。最初の頃の代表選手たちは、そういった活動の中で私たちが直接向き合って協働の精神で共に成長してきた選手たちであった。特に2013年の第11回BFA西アジア野球大会(BFA:アジア野球連盟)に出場したチームは、守備力とチームワークに優れた良いチームだったと未だにBFAの関係者らから言われており、当時監督を務めていた私も同じように感じている。

 私たちは2009年にイッソー・タパが初来日した頃から、現地人指導者の育成に重きを置くようになった。そして、ネパール国内での野球の広がりとともに、2017年以降の代表チームは選手が首都カトマンズ周辺も含めた複数のチームから選ばれるようになり、選手の選抜もネパール野球ソフトボール協会(NBSA)が主体となって進められるようになった。この点で、現地の自主的な運営は進んでいるように思うが、その一方で、私たちは子どもたちや選手たちと向き合うことから遠ざかってしまった。それを考えると、ネパール野球の自立という目標にばかり注力しすぎていたのが良くなかったかもしれない。

 そして、2015年にはネパールで大地震が起きた。私たちはスポーツの力で震災の逆境を乗り越えるために、それまでの活動で築いたネットワークを生かした支援活動を行い、地震の1年後に現地で震災復興支援野球大会を開催した。しかし、その一方で、東京オリンピック予選を震災復興の象徴と位置づけ、現地の人々と協働しながら何が何でもそこへ向かおうとしていた。それが良かったのかどうか、活動の本来の目的である野球での国際交流や協働といった理念から外れているのではないか、私たちは日々このような試行錯誤と自問自答を繰り返しながら20年以上活動してきた。現在も悩みは尽きないが、あくまで野球はお互いが成長するためのツールであり、今後も現地の人々と困難なことにも逃げずに向き合い、それを乗り越えることで成長につなげられると考えている。「心」と「心」のキャッチボールなしで互いの成長はありえない。

 また、活動を発展させていくためには、スポーツマンシップの精神も重要な要素である。一般社団法人日本スポーツマンシップ協会によると、スポーツマンシップとは、「相手や仲間、ルール、審判に対する尊重」、「困難や危険を恐れない勇気」、「勝利を目指して全力を尽くす覚悟」の精神で「Good Game」を実現しようとする心構えであり、スポーツマンシップ精神を持つことは、多様性を受け入れて差別や偏見の無いフェアで公正な考え方を持つことにつなげられるとのことである。

 これは私も大いに賛同するところであり、ラリグラスは一方的な支援でない共に学び合う「協働」という理念のもとネパール野球の発展を目指して全力を尽くしてきた。主役は私たちではなくネパールの人たちであり、相手を「思いやる」という気持ちを持つことで、私たちもネパールの人たちから学ばせていただいている。そういった意味で、スポーツマンシップにおける「尊重」、「勇気」、「覚悟」の精神は、私たちの活動の理念にも通じており、成長を図ることは何もネパールの人たちに限ったことではなく、自分たちにも言えることである。言うまでもないが、活動を更に続けていくためには次世代の育成は必須であり、ボランティア団体と言えNPOとして活動する上では、特にそれが求められることになる。上述の通り、私たちの活動は試行錯誤の日々であり、何が正解なのかも分からないが、一番大切なことは日々活動と向き合い、NPOとして挑戦し続けていくことである。最近のネパールの状況であるが、現地ではコロナ禍の厳しい状況は続いている。一部のチームでは子どもたちがグラウンドに集まり練習を再開しているが、これまでの活動の中でいちばんのピンチかも知れない。そんな逆境ではあるが、私たちは「協働」の力で乗り越えられると信じている。

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