文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)
去る12月4日、ネパールのバクタプルで「第1回NBSAラリグラスカップ2021」(以下、ラリグラスカップ)と「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会2021」(以下、CBC大会)という2つの野球イベントが行われた。
まずラリグラスカップであるが、この大会は、これまでネパールでは定期的な野球大会が無く、特に近年は子どもたちが試合や大会の機会に恵まれていなかったことから、彼らの目標となるような場を作るため、定期的な大会を実施しようと企画されたものである。当初、この大会は昨年に行われる予定であったが、コロナ禍でこの時期まで延期された。また、現地での大会運営はイッソー・タパ氏(社会人硬式野球クラブチーム「ナインフォース」所属:奈良県)をはじめとするNPO法人日本アジア球友団ラリグラスの在ネパール理事やネパール野球ソフトボール協会(NBSA)の役員らが中心となって現地の人のみで行われた。ネパール野球の活動は1999年から始まったが、近年では現地の人たちが自分たちだけで大会を運営しており、現地の人たちによるネパール野球の自立が鮮明になっている。
大会には6チームが参加し、優勝はクォパ・キングスであった。クォパ・キングスはバクタプルにあるスポーツアカデミーのチームだが、このアカデミーが野球を取り入れたのは最近のことであり、これも現地の野球関係者による野球普及活動の成果である。この大会がひとつの目標となることで、今後も新たに野球を始める子どもたちが増えれば喜ばしい。
また、イッソー・タパ氏やNBSAのディパーク・ネウパネ事務局長は今回の大会について「このような大会が開催できて大変嬉しく思います。大会は大いに盛り上がり、子どもたちも大変喜んでいました。コロナ禍で活動がしばらく停滞していましたが、この大会を機にネパールの野球を再び盛り上げていきたいと思います」と述べている。
次に、CBC大会であるが、これは7月に開催され当コラムでも紹介したプレ大会の本大会であり、(2021年7月15日付「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会プレ大会2021」参照)9人が1チームとなって2分間に何回キャッチボールができるかを競う日本プロ野球選手会が考案した競技である。
大会の主会場となったのは、東京オリンピックで野球の初戦が行われた福島県のあづま球場である。ちなみにネパールの国花はシャクナゲであるが、福島県の県花もシャクナゲとのことである。また、福島県田村市は東京オリンピック・パラリンピックでネパールのホストタウンになるなど、福島県とネパールとは縁がある。大会には日本と13の国と地域が参加し、時差などの問題でリアルタイムでの参加が難しい国は動画での参加となった。ネパールの子どもたちは、7月のプレ大会にも参加し110回を記録したが、優勝した日本の子どもたちは128回を記録し、その差を痛感していた。どうしたら回数を増やせるのか、どうしたらもっと上手くなれるのか。そのためには自分たちだけで考えるのではなく、日本の子どもたちのような上手なチームの姿を見て学ぶことが重要だということにも気付いた。逆に日本側にしてみれば、このように普段やっていることを見せることも国際交流につながるのである。
競技の後には、日本と海外チームによる交流会が行われ、ネパールは、大阪、三重、香川のチームと交流をした。交流はネパールと日本の選手たちが交互に質問するという形で行われた。質問は野球の質問以外にも、例えば日本側から「ネパールでも日本のアニメをやっていますか」といった質問も出た。日本の選手たちはネパールの事をいろいろと予習しており、最後に「フェリベトーラ(また会いましょう)」とネパール語で挨拶するなど、両国の選手たちは交流を満喫していた。
以上述べたように、2つの野球イベントが行われたこの日は、さながら「ネパール・ベースボール・フェスティバル」とも言える一日となり、コロナ禍で停滞していたネパール野球が再び動き出す象徴的な日となった。
さて、2021年も間もなく終わろうとしているが、今年の日本球界では松坂大輔選手の引退が印象に残っている。私は松坂選手と同世代で、私自身もそれを誇りとし、彼の活躍が励みになっていたが、時代は移り変わっていくものである。様々な課題はあるものの、2022年も時代に合わせたやり方を模索しつつネパールやアジアの野球を盛り上げていきたい。
- 2024年11月25日「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」
- 2024年9月2日「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」
- 2024年4月12日「学校スポーツ連盟との協定」
- 2024年1月15日「1st National Baseball5 Championship 2024」
- 2023年11月28日「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」
- 2023年10月2日「福島県×ネパール シャクナゲ交流」
- 2023年8月30日「ネパール最古参選手」
- 2023年7月14日「ネパール野球ソフトボール協会の新体制発足」
- 2023年6月14日「在日ネパール人による野球体験会」
- 2023年3月27日「WORLD BASEBALL CLASSIC™ 2023」
- 2023年3月1日「ONE WORLD」
- 2022年12月28日「アジア野球連盟審判講習会」
- 2022年10月7日「在日ネパール人との連携」
- 2022年7月20日「第4回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2022年4月15日「主体的な活動」
- 2022年2月14日「ピンチはチャンス」
- 2021年12月22日「ネパール・ベースボール・フェスティバル」
- 2021年11月9日「行動」
- 2021年8月30日「世界への普及を目指して」
- 2021年7月15日「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会プレ大会2021」
- 2021年4月26日「原点に戻る」
- 2021年3月22日「協働」
- 2020年12月25日「迫られる変革」
- 2020年10月1日「WEB野球教室」
- 2020年7月20日「変わるもの、変わらないもの」
- 2020年5月14日「世界がひとつになって逆境を乗り越える」
- 2020年3月2日「ネパール観光年2020」
- 2019年12月25日「ワールドマスターズゲームズ2021関西」
- 2019年12月10日「第3回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2019年11月8日「ネパールへの直行便」
- 2019年9月19日「第14回BFA西アジア野球大会2019」
- 2019年7月2日「政府機関とのつながり」
- 2019年5月22日「第2回ネパール全国野球大会2019」
- 2019年5月4日「北海道ベースボールリーグ」
- 2019年4月15日「国際大会へ、ネパールを応援する人々」
- 2019年3月18日「侍ジャパンシリーズ2019 日本対メキシコ」
- 2019年3月1日「アジア野球連盟総会」
- 2019年2月13日「国際交流活動との出会い」
- 2019年1月9日「野球を通じた国際理解」
- 2018年11月5日「グラウンド開所式」
- 2018年10月26日「ネパールのソフトボール」
- 2018年9月5日「第28回世界少年野球大会」
- 2018年8月3日「楽天イーグルスとの対戦」
- 2018年7月31日「ネパールでのグラウンド建設」
- 2018年7月2日「東京オリンピックへの道のり」
- 2018年5月8日「PRESIDENTIAL CUP」
- 2018年4月16日「新たなネパール代表チームの選考」
- 2018年4月2日「日本の大学生との野球交流」
- 2018年2月5日「パキスタン野球連盟カワール・シャー会長を偲ぶ」
- 2017年12月27日「ネパール野球ソフトボール協会の奮闘」
- 2017年12月6日「ネパール野球ソフトボール協会の来日」
- 2017年11月29日「南アジア交流野球教室」
- 2017年10月31日「第2回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2017年10月10日「ネパール代表選手の日本での活動」
- 2017年9月22日「ネパール代表選手、ゼロロクブルズで学ぶ」
- 2017年8月21日「北海道での挑戦始まる」
- 2017年7月25日「スポーツ庁長官感謝状」
- 2017年6月23日「スポーツで広げる友好の輪」
- 2017年6月7日「北海道での挑戦」
- 2017年4月18日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.2」
- 2017年4月4日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.1」
- 2017年2月14日「世界最下位からの挑戦」
- 2017年2月9日「代表強化合宿」
- 2017年2月3日「ネパール人コーチの来日」
- 2017年1月10日「ネパール代表チーム」
- 2016年12月28日「もうひとつのWBC」
- 2016年12月16日「ネパールU15野球大会」
- 2016年11月25日「NHKの新番組『世界はTokyoをめざす』」
- 2016年10月7日「ネパール野球とオリンピック」
- 2016年10月4日「ネパールの雨季」
- 2016年8月22日「東北楽天イーグルスのネパール支援」
- 2016年6月13日「日本に住むネパール人への野球普及」
- 2016年5月19日「被災地の野球事務所に見た信念」
- 2016年5月2日「ネパール復興支援野球大会」
- 2016年4月4日「野球途上国 共通の課題」
- 2016年3月17日「ネパールから日本へ」
- 2016年3月14日「さらなる野球普及へ」
- 2016年2月10日【西アジアの野球ネパール編】〜野球普及への葛藤と模索〜
- 2016年2月9日【西アジアの野球ネパール編】〜野球を拡める課題と苦労〜
- 2016年2月2日「動き出した時間」
- 2016年1月7日「復興支援野球大会の延期」
- 2015年10月15日 「野球指導員、ネパールでの活動」
- 2015年8月21日 「ネパール野球の有望株」
- 2015年6月2日 「希望から絶望へ」
- 2015年4月20日 「ネパール野球の現状」
- 世界の野球 可能性を秘めたコロンビア野球
- 世界の野球 力戦奮闘ブラジル野球!~日系移民が紡いできた夢~
- 世界の野球 東欧ブルガリア -野球事情とその展望-
- 世界の野球 ヒマラヤを北に臨む国 ネパールの野球
- 世界の野球 清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 インドネシア編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 パキスタン編
- 世界の野球 アジア選手権 日本人監督の挑戦 番外編 タイ野球の歩み
- 世界の野球 日本人指導者の挑戦 香港野球編
- 世界の野球 フランス通信~フランス野球・ソフトボール連盟より~
- 世界の野球 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
- 世界の野球 "アフリカからの挑戦・赤土の青春" ウガンダベースボール
- 世界の野球 パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂
- 世界の野球 アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道"
- 世界の野球 受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~
- 世界の野球 セルビア野球の挑戦と葛藤 バルカン・ベースボール事情あれこれ
- 世界の野球 ケニア野球、一歩一歩 元独立リーガー日本人青年監督の奮闘!
- 世界の野球 欧州の野球事情
新着記事
ジャパン 関連記事
世界の野球 関連記事
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「カラダを動かす楽しさを伝えよう!」2024年11月25日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」2024年9月2日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「学校スポーツ連盟との協定」2024年4月12日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「1st National Baseball5 Championship 2024」2024年1月15日 |
"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国 ネパールの野球「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」2023年11月28日 |