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"世界の野球"ヒマラヤを北に臨む国ネパールの野球 第16回「ネパールの雨季」

2016年10月4日

文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)

 本コラムの題名にもあるとおり、ネパールはヒマラヤ山脈のふもとに広がる国である。標高はカトマンズで約1300m、ポカラで約800mである。標高が高いため、気温が低いと思われがちだが、実はそうではない。ネパールの緯度は奄美諸島と同じぐらいで、気候区分としては亜熱帯性気候となる。ときには猛暑となることもあり、今年の4月に行われた「ネパール復興支援野球大会」は、連日30度を超える気温の中で行われた。

 また、ネパールには雨季と乾季がある。雨季は6月から9月で、ベンガル湾やアラビア海で水分を含んだ季節風(モンスーン)が南アジア諸国に多くの雨をもたらす。この雨は、ときには水害の原因となることもある一方、ネパールではこの雨が生活用水や農業用水となるほか、水力発電にも利用され、電力事情の悪いネパールにとって貴重なエネルギー源となっている。

 ネパールの雨季は、日本の梅雨とは違い、夕立のような雨が一日に何度も降る。地域によって降水量には差があるが、ラリグラスの会が活動を行ってきた地域の中では、ポカラの降水量が最も多い。ポカラのグラウンドからは、普段であれば、ヒマラヤの山々がはっきりと見えて奇麗なのだが、雨季の間は、雲に隠れて見えないことも少なくない。

 そんな状態なので、雨季の間は野球をするのが難しい。雨が降っているときはもちろんのこと、野球をするグラウンドも水はけが良いわけではないので、雨が上がってもすぐに野球ができるわけではないし、濡れたグラウンドは滑りやすくて危険でもある。ポカラの選手からは「毎日雨ばかりで、野球の練習ができない。雨季が終わるのが待ちどおしい。」といった言葉が漏れてくる。ネパールの野球少年たちにとっては、やるせない日々が続く。

 ネパールで野球が広まっていくのには様々な困難がある。日本からの視点では見落とされがちだが、雨季というのも大きな困難のひとつかもしれない。ともあれ、9月に入り、雨季は間もなく終わる。野球少年たちの元気な姿が、またグラウンドに戻ってくるであろう。

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