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"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国ネパールの野球「北海道ベースボールリーグ」

2019年5月4日

文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)

 去る4月25日、北海道ベースボールアカデミー(以下、HBA)が運営団体となり、2020年春の開幕を目指している「北海道ベースボールリーグ」設立の記者会見が札幌で行われた。

 このHBAで、2017年にネパールのニスチョル・ケーシー選手が3ヶ月に渡り研修を行ったことがある。同選手はHBAでの研修から帰国後、バクタプルのチームの牽引役となるほか、昨年、インドで行われた「プレジデンシャル・カップ」ではネパール代表にも選ばれ、他の代表選手たちにも日本で学んだ技術を伝えていた。5月9日から7月にスリランカで開催されるBFA西アジア野球大会へ向けた代表選手選考会を兼ねたネパールの国内大会も開催されるが、ニスチョル・ケーシー選手も再び代表入りを目指して練習に励んでいる。

 しかしそんな中、スリランカから衝撃的なニュースが飛び込んできた。BFA西アジア野球大会が開催されるコロンボで連続爆弾テロ事件が発生し、多くの人々が犠牲となった。犠牲者の皆様には、哀悼の意を表したい。7月の大会に対するこの事件の影響が懸念されるが、ネパールとしては、変わることなく大会に向けて準備を進めていくしかない。事件の被害がこれ以上拡大しないことを願っている。

 ところで、冒頭に述べた北海道ベースボールリーグであるが、当初は富良野市と美唄市の2球団から始め、2030年には8球団での運営を目指しており、年間約70試合のリーグ戦のほか、NPB等との交流戦を行う予定である。

 同リーグは、「野球文化を通じて北海道を舞台に世界中の人材育成を図り、豊かな社会を築く人材を排出する」という理念を掲げており、「人材育成と地域活性化」を主眼に置いている点が特徴となっている。そして、選手の自主性を重んじ、チームには監督を置かず、選手自身が考えることで選手の成長を促している。その他にも、地元の企業や農家などと連携して選手のセカンドキャリア形成の支援を行ったり、地域通貨を用いて地域企業への貢献をしたり、野球を通じて地域を活性化する事業も展開する予定で、HBA代表の出合祐太氏も「地域のニーズと選手のニーズを合致させた、今までに無い育成リーグを目指す」と話している。なお、同リーグでは、お笑いコンビ「ますだおかだ」の増田英彦氏が応援大使を務めており、会見でも出合氏らに激励の言葉を述べていた。

 また、HBAは外国人選手の受け入れにも尽力しており、前述のニスチョル・ケーシー選手の研修もその一環であった。新設されるリーグにもその点が考慮されており、日本語教室の開設も予定されている。以前、私たちもネパール野球の活動において、ネパールで日本語教室を運営していたことがあり、ネパール代表チームの主将イッソー・タパ氏もそこで学んでいた。その後彼は日本に渡り、今ではネパール野球の中心人物となっている。いずれにせよ、ネパールだけでなく、野球が発展途上にある国々の選手にとって日本で野球ができる場が増えることは喜ばしいことである。

 ちなみに、記者会見の日は2015年にネパールで大地震が発生してからちょうど4年目にあたる日であった。この地震では、ネパールの多くの野球少年たちも被害を受けた。しかし当時、彼らは野球をすることで地震の辛さから逃れることができたと話していたが、それも野球が地域社会に貢献したひとつの例なのかもしれない。前述のように、北海道ベースボールリーグは、野球を通じた人材育成と地域活性化を目指すという今までに無い形の育成リーグであり、これはひとつの挑戦と言える。北海道ベースボールリーグの成功と今後の発展を願っている。

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