世界の野球

"世界の野球"ヒマラヤを北に望む国ネパールの野球「ネパール野球ソフトボール協会の新体制発足」

2023年7月14日

文・写真=NPO法人日本アジア球友団ラリグラス(小林洋平)

　前回紹介したとおり、去る6月17日にネパール政府公認の野球統括団体であるネパール野球ソフトボール協会（NBSA）の総会および役員選挙が実施された。本来であれば、この総会と役員選挙はもっと早い時期に行われるはずであったが、コロナ禍やネパールの政治的混乱で延期につぐ延期となっていて、この度、実に3年以上遅れでの実施となった。

　今回の役員選挙では、合わせて21名の役員が選出された。その中で、新会長にはディパック・ネウパネ氏が選出された。同氏は、これまでNBSAの事務局長として活躍していた人物であり、世界野球ソフトボール連盟やアジア野球連盟の総会にも出席している。同氏は会長就任にあたり「新会長に選んでいただいたことは、大変名誉なことであり、皆様に深く感謝申し上げます。ネパールの野球とソフトボールのために大いに貢献できるよう、共に前進していきましょう」と述べるとともに、NBSA会長としての職務を遂行するにあたり、最高水準の誠実さ、透明性、説明責任を堅持すること、ネパール野球の成長を促進し、野球が体現するスポーツマンシップ、チームワーク、忍耐という価値観を広めていくことについても言及し、抱負を語った。

　他にも当コラムで幾度となく紹介しているイッソー・タパ氏やMLBアカデミーで研修を受けた経験を持つローシャン・タパ氏（バクタプル・ベースボール・クラブ代表）も新役員に選出されている。新体制が発足したことでネパール野球は発展に向けて新たな一歩を踏み出した。今後は、ディパック・ネウパネ新会長がリーダーシップを発揮し、他の役員と力を合わせてネパール野球が良い方向に進んでいくものと信じている。

　そして、その流れの一つとして、NBSAはネパールでの野球普及のため各地に支部組織を作るとともに各地で野球チームを結成しようとしている。各地に支部組織を作って野球普及を図って行くことは、ネパールのスポーツを統括する政府組織である国家スポーツ評議会からも求められていることであり、NBSA存続のために課せられた条件でもあった。

　各地の支部組織に関しては、ネパール全7州のうち6州の協会と33の地区協会が設立されており、総会にも参加した。また野球チームは、既に数チームが新たに結成され、国家スポーツ評議会から求められているNBSA存続のための条件も全て満たし、野球大会を開催するなど急速な広がりを見せている。しかし、ここで浮き上がって来ているのが野球道具の問題である。ネパールで野球普及を進めていくには多くの野球道具が必要だが、野球が一般的ではなく発展途上にあるネパールでは野球道具は販売されておらず、野球道具を入手するのは困難である。周辺国にも協力を仰いではいるが、周辺国も野球が発展途上で、それも難しく厳しい状況にある。それで、新たに結成されたチームにおいても野球道具が不足していて困っている状況である。こうした背景から、NBSAは日本にも野球道具の協力を求めている。私たちはこれまでも日本でネパールで使う野球道具のご寄付を集めてきた。輸送費の高騰により、以前のようなスムーズな輸送はできないかもしれないが、それでも改めて野球道具のご寄付を広く呼びかけることとした。

　今回、NBSAの新体制が発足し、ネパール野球は新たな展開を見せている。その中で、野球道具の事もさることながら、NBSAは様々な形でネパール野球の活動に参加する仲間を求めているし、多くの皆様と一緒にこれからのネパール野球を作って行きたいと考えている。ネパールのみならず、アジアや世界の野球を盛り上げていくためにも、多くの人々の共創がまさに求められている。