文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)
東京オリンピックの開幕まであとわずかである。野球競技も日程が発表され、7月28日に福島県営あづま球場での日本対ドミニカ共和国戦で幕を開ける。ちなみに、同じ福島県の田村市はネパール陸上選手団のホストタウンとなっている。
ところで、その福島では現在、日本プロ野球選手会や福島ベースボールプロジェクト、福島中央テレビが主催する「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会プレ大会2021」の開催準備が進められており、この大会には、ネパールからもチームが参加する予定である。キャッチボールクラシックは、日本プロ野球選手会が野球の原点であるキャッチボールを普及させるために考案した、9人が1チームとなって2分間に何回キャッチボールができるかを競う競技である。
キャッチボールクラシックの大会は東日本大震災の起った2011年に「FOR OUR KIDS」をテーマに福島での野球の復興イベントとして始まった。この大会テーマは、「10年後、20年後の復興の担い手は、間違いなく今の子どもたちである」との想いから定められたものである。福島で始まった大会は、その後、全国大会へと発展していった。そして、昨年はコロナ禍からオンラインという新たな形で実施され、今年はさらに海外からの参加チームも募ってオンラインでの国際交流大会として開催されることとなった。今回の大会は7月25日にプレ大会、12月4日に本大会が予定されており、プレ大会には日本から15チーム、海外からも様々な国の子どもたちの参加が見込まれている。また、大会では競技だけでなく、日本と海外のチームの交流会も行われる。今回の大会には、前述の主催者に加え、福島県中学野球競技力向上委員会などが協力者として名を連ねており、各国を応援する国際貢献事業もあってこの大会が成り立っているのである。
前回の記事の中で、コロナ禍で活動が制限される中でネパールの一部のチームではキャッチボールで盛り上がっていること、キャッチボールは私たち日本アジア球友団ラリグラス(4月14日に「ネパール野球ラリグラスの会」から改称)の活動の原点であることなどキャッチボールについても言及した。
キャッチボールは野球の基本練習の一つではあるが、それだけにとどまらない深い意味を持っている。多くの野球人も言っている事だが、キャッチボールは一人ではできない。そして、ボールを投げるときに相手が捕りやすいように投げることが必要になる。つまりは、相手を思いやる気持を持つことが大切であり、ひいては、社会生活においてもそういった思いやりのある人間への成長を促すことに繋がっていく。
上述したとおり、この大会にはネパールからもチームが参加する。参加予定のネパールの選手たちも大会を楽しみにしている。ネパールが参加するのを受けて、私たちは先日、ネパールと結んで7月のプレ大会に向けたリハーサルを行った。リハーサルにはネパール側から選手、ボランティアが30名近く参加し、最近思うように野球ができていない選手たちが楽しそうにキャッチボールをする姿を見ることができた。リハーサルは大きな問題も無く終了し、私たちも安心した。リハーサルに参加した選手たちは「大会がとても楽しみ。当日は頑張りたい」と大会に向けた意気込みを話していた。
私たちは、スポーツを通じた国際交流や人間的な成長を主な目的として活動をしている。キャッチボールで世界を繋げ、国際交流や思いやりのあるグローバルな人材育成を目指したこの大会は、私たちの活動目的にも合致し、ネパールでは7月上旬のこの時期になっても一部の地域でロックダウンが続いているが、そういった中で、この大会にネパールも参加させていただけることは、大変喜ばしいことである。
昨年来のコロナ禍の中で私たちの活動も様々な制限が加わった。その状況下で、この大会のようなオンラインでの活動は有効な手段であり、私たちもオンラインでの活動が中心となっているのが現状である。対面での活動が難しい中、今後もオンラインを有効に活用して活動を広げていきたい。
さて、冒頭の東京オリンピックの野球に話を戻せば、去る6月28日に発表されたWBSCの世界ランキングでは開催国の日本が1位となった。このランキングで、ネパールは東京オリンピックの実質的な1次予選であった2019年のBFA西アジア野球大会で全敗したことなどが影響して最下位となってしまった。とはいえ、オリンピックの野球はネパールの野球関係者も大いに注目するところであり、開催国である日本の活躍に期待している。
- 2024年9月2日「ネパール野球25周年日本ネパールスポーツ交流プログラム2024-2025」
- 2024年4月12日「学校スポーツ連盟との協定」
- 2024年1月15日「1st National Baseball5 Championship 2024」
- 2023年11月28日「目指せ!体験から広がる笑顔の輪」
- 2023年10月2日「福島県×ネパール シャクナゲ交流」
- 2023年8月30日「ネパール最古参選手」
- 2023年7月14日「ネパール野球ソフトボール協会の新体制発足」
- 2023年6月14日「在日ネパール人による野球体験会」
- 2023年3月27日「WORLD BASEBALL CLASSIC™ 2023」
- 2023年3月1日「ONE WORLD」
- 2022年12月28日「アジア野球連盟審判講習会」
- 2022年10月7日「在日ネパール人との連携」
- 2022年7月20日「第4回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2022年4月15日「主体的な活動」
- 2022年2月14日「ピンチはチャンス」
- 2021年12月22日「ネパール・ベースボール・フェスティバル」
- 2021年11月9日「行動」
- 2021年8月30日「世界への普及を目指して」
- 2021年7月15日「キャッチボールクラシックオンライン国際交流大会プレ大会2021」
- 2021年4月26日「原点に戻る」
- 2021年3月22日「協働」
- 2020年12月25日「迫られる変革」
- 2020年10月1日「WEB野球教室」
- 2020年7月20日「変わるもの、変わらないもの」
- 2020年5月14日「世界がひとつになって逆境を乗り越える」
- 2020年3月2日「ネパール観光年2020」
- 2019年12月25日「ワールドマスターズゲームズ2021関西」
- 2019年12月10日「第3回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2019年11月8日「ネパールへの直行便」
- 2019年9月19日「第14回BFA西アジア野球大会2019」
- 2019年7月2日「政府機関とのつながり」
- 2019年5月22日「第2回ネパール全国野球大会2019」
- 2019年5月4日「北海道ベースボールリーグ」
- 2019年4月15日「国際大会へ、ネパールを応援する人々」
- 2019年3月18日「侍ジャパンシリーズ2019 日本対メキシコ」
- 2019年3月1日「アジア野球連盟総会」
- 2019年2月13日「国際交流活動との出会い」
- 2019年1月9日「野球を通じた国際理解」
- 2018年11月5日「グラウンド開所式」
- 2018年10月26日「ネパールのソフトボール」
- 2018年9月5日「第28回世界少年野球大会」
- 2018年8月3日「楽天イーグルスとの対戦」
- 2018年7月31日「ネパールでのグラウンド建設」
- 2018年7月2日「東京オリンピックへの道のり」
- 2018年5月8日「PRESIDENTIAL CUP」
- 2018年4月16日「新たなネパール代表チームの選考」
- 2018年4月2日「日本の大学生との野球交流」
- 2018年2月5日「パキスタン野球連盟カワール・シャー会長を偲ぶ」
- 2017年12月27日「ネパール野球ソフトボール協会の奮闘」
- 2017年12月6日「ネパール野球ソフトボール協会の来日」
- 2017年11月29日「南アジア交流野球教室」
- 2017年10月31日「第2回世界野球ソフトボール連盟総会」
- 2017年10月10日「ネパール代表選手の日本での活動」
- 2017年9月22日「ネパール代表選手、ゼロロクブルズで学ぶ」
- 2017年8月21日「北海道での挑戦始まる」
- 2017年7月25日「スポーツ庁長官感謝状」
- 2017年6月23日「スポーツで広げる友好の輪」
- 2017年6月7日「北海道での挑戦」
- 2017年4月18日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.2」
- 2017年4月4日「第13回BFA西アジア野球大会2017 vol.1」
- 2017年2月14日「世界最下位からの挑戦」
- 2017年2月9日「代表強化合宿」
- 2017年2月3日「ネパール人コーチの来日」
- 2017年1月10日「ネパール代表チーム」
- 2016年12月28日「もうひとつのWBC」
- 2016年12月16日「ネパールU15野球大会」
- 2016年11月25日「NHKの新番組『世界はTokyoをめざす』」
- 2016年10月7日「ネパール野球とオリンピック」
- 2016年10月4日「ネパールの雨季」
- 2016年8月22日「東北楽天イーグルスのネパール支援」
- 2016年6月13日「日本に住むネパール人への野球普及」
- 2016年5月19日「被災地の野球事務所に見た信念」
- 2016年5月2日「ネパール復興支援野球大会」
- 2016年4月4日「野球途上国 共通の課題」
- 2016年3月17日「ネパールから日本へ」
- 2016年3月14日「さらなる野球普及へ」
- 2016年2月10日【西アジアの野球ネパール編】〜野球普及への葛藤と模索〜
- 2016年2月9日【西アジアの野球ネパール編】〜野球を拡める課題と苦労〜
- 2016年2月2日「動き出した時間」
- 2016年1月7日「復興支援野球大会の延期」
- 2015年10月15日 「野球指導員、ネパールでの活動」
- 2015年8月21日 「ネパール野球の有望株」
- 2015年6月2日 「希望から絶望へ」
- 2015年4月20日 「ネパール野球の現状」
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