文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)
大会4日目、スリランカとの準決勝が始まった。パキスタンと同様に、スリランカともネパールは過去2度対戦しているが1点も奪えず大差でコールド負けしている。しかし、予選リーグの戦いぶりからも分かるように、ネパールの実力は確実に向上している。
だが、予選リーグではまずい走塁が目立ち、自滅しているシーンが多く見られた。そのため、スリランカ戦の前日は走塁に重点を置いて練習を行った。「昨日の走塁を試合で実践しよう!」と試合前の円陣で選手たちに呼びかけ、スリランカ相手にどこまで戦えるか、期待を持ちながら試合に臨んだ。
試合は序盤からスリランカ優位の展開となり、スリランカが3回までに8安打で11点を奪う一方でネパールは三者凡退が続いていた。その後、ネパールは4回から登板した2番手投手が好投し、スリランカ打線を無安打に抑えた。彼は3日前のパキスタン戦にも登板して好投を見せていたので期待していたが、その期待に見事応えてくれた。しかし、ネパール打線は完全に沈黙したままで、結果的に11対0で7回コールドながら完全試合を喫してしまった。走塁を実践することさえできなかったことが何よりも残念だった。
尚、もう一方の準決勝、パキスタン対イラン戦では11対0でパキスタンが勝利を収めた。この結果、決勝戦はパキスタン対スリランカとなり、ネパールは銅メダルを懸けてイランと戦うこととなった。イランは前回準優勝のチームであり、今回はキューバ人のコーチ陣がチームを指揮していた。決して楽な相手ではないが、チーム全員が「絶対に勝つ」という信念で試合に臨んだ。
そして翌日の大会最終日、イランの先行で3位決定戦が始まった。ネパールはイラク戦から中2日でイッソー・タパが先発のマウンドに立った。試合が始まると、序盤は両軍譲らず4回表まで0対0の均衡が続いた。
試合が動いたのは4回裏。ネパールが2点を先制した。しかしこの時、事件が起こった。2点目のホームインがクロスプレーとなり、一度はセーフの判定が下ったものの、その後、イランの捕手がホームインした走者にタッチするとアウトに判定が覆った。これに激高したネパールの監督が主審に詰め寄って激しく抗議した末、退場処分となってしまった。選手たちも全員ベンチを飛び出し、グラウンドは騒然となった。審判団で確認した結果、再びセーフに覆るとイラン側が猛抗議。銅メダルが懸かった試合だけに、両チームとも熱くなっていた。そして、2点目の走者は本塁突入の際に負傷して交代。先制はしたものの、ベンチは重苦しい雰囲気に包まれてしまった。
その後、ネパールは集中力を欠いたプレーが続き、守備も乱れた。負傷交代したのが守備の上手い遊撃手であったのも痛手であった。5回表にエラーからすぐさま同点を許すと、7回表までに10対2と突き放されてしまった。7回裏に4点を返し、10対6として意地を見せたものの追いつかなかった。
この試合、イッソー・タパは肉離れで厳しい状態の中、6回で2安打、自責点0(5失点)とよく投げた。また、イランの5安打に対しネパールは7安打と安打数はネパールが上回っていたにも関わらず、悔しい結果となってしまった。イランはキューバ人コーチの下、守備がよく鍛えられていた。試合時間5時間超の激闘になったが、細かい点で得点差以上の差があり、負けるべくして負けたと感じている。
しかし、ネパールも4年前より確実に成長していた。メダルは次回に持ち越しとなり、今回はこのような結果に終わってしまったが、役員や選手たちがこの悔しさを持ち続けることが次につながっていく。ネパールのディパック・ネウパネ監督は大会を振り返って「今回の大会に参加したことは私たちにとって素晴らしい経験でした。そしてこの経験はネパール全土での野球の発展につながっていくことでしょう。」と感想を述べている。今後も私たちは、例えばグラウンド建設など、そうした選手たちを後ろから支える活動をし、2年後の東京オリンピック予選にも繋げていきたい。
さて、ネパール対イランの試合が終わって間もなく、パキスタンとスリランカの決勝戦が始まった。両者互角で息詰まる熱戦の末、4対2でスリランカがアジア5位のパキスタンを破り、初優勝を飾った。スリランカとパキスタンは今秋に台湾で行われる「第28回BFAアジア野球選手権」に出場し、日本、韓国、台湾、中国のアジア四強とも対戦する。
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