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"世界の野球"ヒマラヤを北に臨む国ネパールの野球 第20回「もうひとつのWBC」

2016年12月28日

文・写真=NPO法人ネパール野球ラリグラスの会(小林 洋平)

 前回の記事では11月にカトマンズで行われたU15の野球大会について紹介したが、それから1ヶ月後の去る12月16日から3日間に渡り、「第1回ネパール全国野球大会2016」が開催された。大会に出場したのは、ポカラ・イエティーズ、バクタプル・ライジングスターズ、ゴルカクルー、武装警察、ネパール国軍で、現在のネパールを代表する5チームが集まったネパール最高峰の大会となった。優勝は武装警察。武装警察が野球を始めたのは数年前であるが、ネパールの野球が1999年にポカラから始まったこともあり、かつてはポカラの選手が武装警察に指導に行ったときもあった。今回の大会で優勝を勝ち取った武装警察の成長には目を見張るものがある。

 ところで、この大会にはもうひとつの目的があった。来年2月25日から3月1日までパキスタンのイスラマバードで開催される「第13回BFA西アジア野球大会2017」に出場するネパール代表チームの選手の選考である。この大会の正式名称は「13th BFA West Asia Baseball Cup 2017」。非公式ながら、「WBC」と略すこともできる。日本球界でWBCといえば侍ジャパンも出場する「World Baseball Classic」のことを指すので、西アジア野球大会は「もうひとつのWBC」といったところであろうか。

 ネパール全国野球大会の期間中、私もネパールを訪れ選手の選考に加わった。選考は主に試合でのプレー等を見て行ったが、短期間で5チームの選手の技量を見極め、代表選手を選出するのは大変困難なことであった。また、代表選手を発表するということは、それ以外の選手にいわば不合格を告げることでもあるし、彼らの今後の人生を左右することにもなりかねず、心苦しいものがあった。しかし、代表チームの人数には限りがあるので、他にも選びたい選手はいたが、心を鬼にして、最終的に19名の選手を選出した。
 ネパールは過去2回、国際大会(2011年第1回南アジア野球選手権、2013年の第11回西アジア野球大会)に出場しているが、両大会とも全敗している。また、過去の大会では全てポカラから選手が選出されていた。しかし、その後、ポカラ以外でも日常的に野球を行う場所が増え、今回は5チームからの選出となった。また、大会に向けた強化合宿も計画されている。

 2020年には東京オリンピックが開催される。そして、その前年の2019年には野球の予選となるアジア野球大会が開催されることとなるであろう。そういった意味で、今回の「第13回BFA西アジア野球大会2017」は、2020年東京オリンピックの前哨戦となる大会でもある。ネパールを背負って国際舞台で戦うこととなった19名が「もうひとつのWBC」でネパールに初勝利をもたらすことを期待している。

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